瓔珞(えいらく)13話 親と法
目次
あらすじ
魏瓔珞(ぎえいらく)は先日阿双(あそう)と芳草(ほうそう)が薬剤の取引をしていた場所で犬を呼ぼうとしていました。そこに侍衛(しえい)の富察傅恒(フチャふこう)が現れ友人の海蘭察(ハイランチャ)を欺いた理由を尋ねました。瓔珞(えいらく)が海蘭察(ハイランチャ)に渡した雪球(せつきゅう)の皮は偽物でした。
傅恒(ふこう)が瓔珞(えいらく)を皇帝陛下のもとに連行しようとすると雪球(せつきゅう)がひょっこり出て来ました。瓔珞(えいらく)は「犬には善悪の区別がわからず責任は飼い主にあるので死なせるのがしのびなく密かに飼っていた」と釈明しました。瓔珞(えいらく)は雪球をかわいがると、傅恒(ふこう)はその美しい微笑にしばし見とれてしまいました。
我に返った傅恒(ふこう)は雪球を皇宮の外に連れて行くことに決めました。瓔珞(えいらく)は優しい飼い主を見つけてほしいと傅恒(ふこう)に犬を渡しました。
傅恒(ふこう)に掴まれた瓔珞(えいらく)の腕が赤くなっていました。
「疑ってすまなかった。あなたのことを信じよう。」
傅恒(ふこう)は初めて謝りました。
「息を吹きかけて冷ましてください。」
瓔珞(えいらく)は傅恒(ふこう)の前に腕を差し出しました。
「悪いが近すぎる。」
傅恒(ふこう)は顔をそむけました。
夜。
女官たちは池を掃除していました。
「跪いてばかりだから膝が痛むのです。」
瓔珞(えいらく)は義姉の張女官(ちょうにょかん)の膝を気遣って虎の皮の膝当てをあげました。張女官(ちょうにょかん)はどうして斑点が入った皮を海蘭察(ハイランチャ)に渡したのか尋ねました。瓔珞(えいらく)は海蘭察(ハイランチャ)は豪胆だけど、傅恒(ふこう)は用心深いので疑いを晴らすためだったと言いました。
「張さん。私は悪い女です。姉の復讐を遂げるまでは手段を選びません。諭したって無駄ですよ。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「悪人が高貴妃(こうきひ)を何度も敵に回したうえで愉貴人(ゆきじん)を救うのかしら?雪球に自分の食事を分け与えるかしら?」
張女官(ちょうにょかん)は言いました。
瓔珞(えいらく)は保身のために犬を利用したのでせめてもの罪滅ぼしだと答えました。
「瓔珞(えいらく)。敵を欺くき悪人を貫くには徹底的に悪人にならないといけない。少しでも優しさを見せると災いを招くわ。」
張女官(ちょうにょかん)は言いました。
日中の儲秀宮(ちょしゅうきゅう)。
高貴妃(こうきひ)は御膳茶房が出した茶をまずいといって床に投げつけました。侍女の芝蘭(しらん)は廬山(ろざん)の茶の木は雨で根が腐り献上できなかったと答えました。高貴妃(こうきひ)は御膳茶房の者を呼ぶよう命じました。
嘉貴人(かきじん)が高貴妃(こうきひ)の前に挨拶に現れました。芝蘭(しらん)が戻って来て怡親王(いしんのう)の使者に会ったと報告しました。芝蘭(しらん)は高貴妃(こうきひ)に耳打ちしました。
高貴妃(こうきひ)は芝蘭(しらん)に「公正に処理してちょうだい」という伝言を怡親王に伝えてくるよう命じました。
高貴妃(こうきひ)は嘉貴人(かきじん)を赦すかわりに長春宮を牽制するよう命じました。嘉貴人(かきじん)は「功で罪を償います」と答えました。
夜の承乾宮。
嫻妃(かんひ)輝発那拉(ホイファナラ)氏は弟の常寿(じょうしゅ)が病気で悩んでいました。侍女の珍児(ちんじ)はお母上様が医者を遣わしてくれると言いました。嫻妃(かんひ)は不出来な弟でもかわいかった思い出を語りました。
「命乞いをしない私を弟は恨んでいるかも。常寿(じょうしゅ)が回復するよう願うばかりよ。」
嫻妃(かんひ)は言いました。
「回復した常寿(じょうしゅ)にまた国を脅かせというのか?」
乾隆帝が部屋に入って来て嫻妃(かんひ)に応えるよう迫りました。
嫻妃(かんひ)は「常寿(じょうしゅ)がまだ若く気の迷いで罪を犯しましたが、法を知る者ゆえに命乞いはしませんが常寿(じょうしゅ)の苦しみに心を痛めるのは世の常です」と釈明しました。
「では父はどうだ。若くて気の迷いで罪を犯したといえるのか。」
乾隆帝は言いました。
「父は公明正大に務めを果たしてまいりました。唯一の欠点は息子を甘やかしたことです。」
嫻妃(かんひ)は答えました。
「怡親王によると那爾布(ナルブ)から銀子を渡されたらしい。」
乾隆帝は言いました。
「まさか!どうしてお父さまが怡親王に!?」
嫻妃(かんひ)は驚きました。
「怡親王(イチンワン)は常寿(じょうしゅ)の裁判に参加する。ナルブは息子の命乞いをしたそうだ。」
乾隆帝は言いました。
「お父さまは清廉潔白に生きてまいりました。賄いにする銀子を持ち合わせていません。」
嫻妃(かんひ)は言いました。
「ナルブはそなたが茶会で受け取った五百両を賄賂に使った。」
乾隆帝は言いました。
「あの銀子は常寿(じょうしゅ)を医者に診せるためのもので賄に使うなどあり得ません。私はお父さまを信じます。怡親王(イチンワン)を疑うべきではありませんか?」
嫻妃(かんひ)は強い口調で言いました。
「どうして怡親王(イチンワン)を疑う?」
乾隆帝は言いました。
「怡親王(イチンワン)は高貴妃(こうきひ)のお父さまにすり寄っています。誰かの指示を受けてお父さまを陥れたのかも。陛下。この命を懸けてもお父さまは潔白であると信じます。」
嫻妃(かんひ)は跪きました。
「まだ現実がわからぬようだな。牢獄に行き清廉潔白な父に会ってくるがよい。」
乾隆帝は部屋から出て行きました。
「後悔なさるのは陛下です。」
嫻妃(かんひ)は父を信じていました。
牢屋。
嫻妃(かんひ)は面会を希望しました。
見張りの兵はナルブだけだと答えました。
嫻妃(かんひ)は父に会いました。ナルブは「陛下に会わせる顔が無い。ご厚恩にそむいてしまった」と悲しんでいました。
「私が高貴妃(こうきひ)に従わぬゆえこうなってしまったのです。私のせいなのです。もう一度陛下に審理を求めてみましょう。」
嫻妃(かんひ)は言いました。
「お前と輝発那拉(ホイファナラ)家に申し訳が立たぬ。一時の気の迷いで大罪を犯してしまった。」
ナルブは泣きました。
嫻妃(かんひ)はなぜ賄賂を贈ったのか父に尋ねました。
ナルブは妻に何度もせがまれたと答えました。
嫻妃(かんひ)は良心を教えてくれた父が不正を働いたので失望しました。
「私が悪かった。淑慎(しゅくしん)。父を助けてくれ。命乞いをしてくれ。」
ナルブは跪きみじめな姿を見せました。
父の本性を知った嫻妃(かんひ)は父を見捨てて去りました。
嫻妃(かんひ)は輿の中で泣いていました。母が神武門の近くで待っていました。
「私は悪くないわ。」
母は言いました。
「お母さまはいつも恨み言ばかり。お父さまや私をいつも責めます。お母様を裕福にできないからと。今や全員落ちぶれました!助けたくてももうどうにもなりません!」
嫻妃(かんひ)は愚かな母に怒りました。
そこに従者が馬で駆け付け常寿(じょうしゅ)が亡くなったと報告しました。
「お前が陛下に命乞いをしていたら冷たい牢獄で命を落とすこともなかったのに。お前はここで犬にも劣る暮らしをしている。恥を知りなさい!輝発那拉(ホイファナラ)淑慎(しゅくしん)。家族が不幸な目に遭ったのはあなたのせいよ!お前のような無能な娘を産んだことを後悔してる!」
お母さんは嫻妃(かんひ)を責めると建物に向かって走り出し頭をぶつけて自害しました。嫻妃(かんひ)のお母さんは娘を呪って死にました。
嫻妃(かんひ)は母に愛されていないとも知らずに悲しみました。
夜の長春宮。
富察皇后(ふちゃこうごう)は瓔珞(えいらく)に字を書くよう命じました。瓔珞(えいらく)はうまく文字が書けませんでした。明玉(めいぎょく)は瓔珞(えいらく)の汚い字を見てあざけりました。
「学生が師匠と競うなんて不敬ですよ。」
瓔珞(えいらく)は明玉(めいぎょく)に言った後、強く言い過ぎたことを謝りました。
皇后は瓔珞(えいらく)に文字を教えられることに幸せを感じていました。
そこに爾晴(じせい)が深刻な表情で部屋に入って来て承乾宮が大変だと報告しました。
儲秀宮(ちょしゅうきゅう)。
高貴妃(こうきひ)は嘉嬪(かひん)の母と弟がぶざまに死んで高笑いしていました。嘉嬪(かひん)は「はじめからナルブのことで脅せばよかったのに」と言いました。
「あの女は頑固だわ。高潔を貫いて生きられるとでも?今度こそ引き入れてみせる。」
高貴妃(こうきひ)は言いました。
嘉貴人(かきじん)は高貴妃(こうきひ)にもっと力を見せつけるべきだと言いました。
嘉貴人(かきじん)は先王の威信を失い乾清門の侍衛(しえい)止まり怡親王をさらに利用して瓔珞(えいらく)を殺す手立て思いつきました。怡親王は高家と親しくなりたがっていました。
「あの女は侍衛(しえい)と恋仲だとか。」
嘉貴人(かきじん)は言いました。
承乾宮の門前。
★
富察皇后(ふちゃこうごう)は嫻妃(かんひ)を見舞に行きました。
しかし珍児(ちんじ)は嫻妃(かんひ)が宮に籠っていると面会を断りました。
皇后は嫻妃(かんひ)へのいたわりの気持ちを示すと次は養心殿に向かいました。
皇后は嫻妃(かんひ)のためにナルブを助けてあげようと思っていました。
明玉(めいぎょく)は反対しました。
皇后は瓔珞(えいらく)に尋ねました。
瓔珞(えいらく)は「皇后様は嫻妃(かんひ)様に同情しておられます」と答えました。
皇后は善を施して来た嫻妃(かんひ)があわれな結末を迎えるのは気の毒だと言いました。
「陛下は聡明ゆえ回りくどい言い方を嫌います。ナルブのためでなく嫻妃(かんひ)様のために命乞いをするのです。」
瓔珞(えいらく)は言い方を提案しました。
養心殿。
富察皇后(ふちゃこうごう)は乾隆帝に会いました。
「近頃茘枝(レイシ)をたくさん召し上がり食が細ったとか。茘枝(レイシ)の葉を煎じた茶で陰陽を整えてください。」
皇后は言いました。
富察皇后(ふちゃこうごう)は嫻妃(かんひ)の話をはじめました。嫻妃(かんひ)は皇宮に来て9年陛下に仕え、母と弟を亡くして父が処刑されたら嫻妃(かんひ)は天涯孤独になってしまうと話し始めました。
「賄に使われた五百両は私が渡したものです。私が医師を牢獄に遣わしていればこの事態は防げました。でも私は噂が立つことを恐れたのです。嫻妃(かんひ)を味方につけるために恩を施したと。他の者を恐れたばかりに常寿(じょうしゅ)を死なせてしまいました。」
皇后は言いました。
乾隆帝は皇后に他人の心配をしないように言いました。
富察皇后(ふちゃこうごう)は嫻妃(かんひ)が生き地獄を味わい自分もまた生涯後悔するといってナルブの命乞いをしました。
承乾宮。
嫻妃(かんひ)は放心していました。
珍児(ちんじ)はナルブが放免されたと言いましたが嫻妃(かんひ)の憂いは消えません。嫻妃(かんひ)は自分を憎むことに命をかけた母に傷ついていました。
夜が明けました。
嫻妃(かんひ)は黒い服に着替えて皇后に会いに行きました。
長春宮。
嫻妃(かんひ)が来たので瓔珞(えいらく)たち侍女は挨拶しました。
爾晴(じせい)は嫻妃(かんひ)を部屋に案内しました。
瓔珞(えいらく)は嫻妃(かんひ)の様子がおかしいことに気が付きました。
皇宮の一角。
嘉貴人(かきじん)の侍女が怡親王と話をしていました。侍女が帰ると富察傅恒(フチャふこう)は怡親王に何をしていたか尋ねました。怡親王(鉄帽子王)は扇子の袋を捜していただけだと答えました。怡親王は傅恒(ふこう)を威嚇しました。
怡親王は昇進を望んでいる斉佳慶錫(ちぎゃけいしゃく)に任務を与えました。斉佳慶錫(ちぎゃけいしゃく)は侍衛(しえい)長になりたがっていました。
長春宮。
富察皇后(ふちゃこうごう)は優雅に読書をしていました。
瓔珞(えいらく)は字を練習していました。
「天下を有する者は天下の主なり。一国を有する者は天下の主なり。我、固(もと)より其の主。この意味は何でしょうか。」
瓔珞(えいらく)は皇后の手本を読みました。
「周の文王が道端の白骨を葬るよう命じたときのこと。引き取りてのない白骨を葬る理由を尋ねられこう答えた。天下を有する者は天下の主なり。一国をの主は疆土(きょうど)を擁する。この白骨の主は私だから野ざらしにできない。」
皇后は言いました。
「つまりすべての富を持つ主は万民の暮らしに責任を負い、気遣わねばならない。会ってますか?皇后様。私はただの女官です。皇帝の教えを知る必要がありますか?」
瓔珞(えいらく)は尋ねました。
「私たちは皆それぞれの立場でそれぞれの務めを果たしているわ。皇帝は民を愛し政にいそしむ。私は天下の母で後宮を管理する。あなたは他の者のために何ができるの?」
皇后は言いました。
「私は自分を律して生きてるだけで十分かと思います。」
瓔珞(えいらく)は答えました。
「窮すれば身を善くし達すれば天下を善くする。」
皇后は言いました。
「では悟ってから考えます。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「瓔珞(えいらく)。そんなに手が震えて自が書けると思う?」
皇后は瓔珞(えいらく)に尋ねました。
「なぜか筆を持つと手が震えるのです。」
瓔珞(えいらく)は答えました。
★
感想
瓔珞(えいらく)13話の感想です。嫻妃(かんひ)一家は教養が無いのにどうして高い地位にあったのでしょうか?バカな父親、母親、弟。嫻妃(かんひ)も肝心なところで機転が回らずみじめな思いをしてしまいました。まるで「庶民」みたいな暮らしぶり。とても貴族のようには見えません。父が清廉潔白であったのは娘の前だけだったようですね。そんな父を信じて育ったのに父に裏切られ母から虐げられて、弟はバカ息子で。まるで嫻妃(かんひ)以外はダメ一家。そんな嫻妃(かんひ)を皇后は哀れむのですが、嫻妃(かんひ)もまたそれまで信じていた善を捨ててしまうのではないかと思います。
瓔珞(えいらく)は皇后様から文字を習って今回は無事でした。
でもなぜか高貴妃(こうきひ)と嘉貴人(かきじん)は瓔珞(えいらく)に狙いを定めているようですね。
続きが気になります。
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