瓔珞(えいらく)9話 太監の凶行
目次
あらすじ
乾隆帝の側室、嫻妃(かんひ)ホイファナラ氏の弟、常寿(じょうしゅ)が不正を行い刑部(ぎょうぶ)に捕まりました。嫻妃(かんひ)の母は常寿(じょうしゅ)を死罪から救って欲しいと娘に頼み込みました。
「お父さまは20年来勤勉で堅実な人でした。私の名前も淑慎(しゅくしん)としました。温にして恵。淑(よ)く其の身を慎む。私にも常に慎重であれと。法を犯せば罰せられて当然です。私が陛下に命乞いをすれば法を歪めることになります。」
嫻妃(かんひ)が言うと、母は娘の頬を叩いて「善人ぶった親不孝者」と罵りました。嫻妃(かんひ)の母は常寿が処刑されたら自分も命を絶つと言って帰りました。母が帰ると嫻妃(かんひ)は侍女に、たとえ陛下に命乞いをしても弟は助からないだろうと言いました。
長春宮。
富察皇后(ふちゃこうごう)は先日の雨のせいで咳の症状が出ていました。宮廷医師は皇后の診察をすると生姜と梨を煎じたものを処方しました。
富察皇后(ふちゃこうごう)は愉貴人(ゆきじん)のことも見てあげて欲しいと医師に頼みました。
御医は富察皇后(ふちゃこうごう)の問いに動揺を見せ、愉貴人(ゆきじん)は心労が重なり情志(じょうし)を失っていると答えました。御医は愉貴人(ゆきじん)の気持ちが晴れなければお腹の子どもに悪影響があると言いました。
皇后は明玉(めいぎょく)に高麗人参を愉貴人(ゆきじん)に贈るよう命じました。
明和宮の門前。
明玉(めいぎょく)は魏瓔珞(ぎえいらく)に薬剤を渡しして皇后陛下のお言葉を伝えてくるよう命じました。
嫻妃(かんひ)の部屋。
嫻妃(かんひ)は泣きながら「法は一人の物にあらず」と書いていました。そこに純妃(じゅんひ)が現れました。純妃(じゅんひ)蘇氏(そし)は嫻妃(かんひ)が捨てた手紙を読みました。
「法は一人の法にあらず。法を犯し国に不敬を働けば臣下が君主を侮り下の者が上の者を脅かすことになる。臣下が君主を侮れば君主は威厳を保てず。玉壺(ぎょくこ)。今の言葉の由来を知ってる?楚の荘王は宮門を通る際に皆に馬車から降りろと命令した。太子は従わず、従者が処刑された。荘王は太子にこう諭したの。法は一人の法にあらず。法に背く者をのさばらせば皆が真似をして法は意味をなさない。臣下が法を軽視すれば君主は尊厳を失い秩序が乱れて国は守れないだろう那爾布(ナルブ)殿は厳格なお人だと聞きますが、そのお手紙を読み納得しました。弟君の命乞いはせぬと決意なさったのね。」
純妃(じゅんひ)は言いました。
「幼い頃より人の道を学んだわ。陛下に仕える妃嬪(ひひん)なら私情を優先したりしないわ。」
嫻妃(かんひ)は答えました。
「でも本心は?なぜ文(ふみ)に涙をこぼし文字をにじませたのですか。陛下は今お怒りです。嫻妃(かんひ)様のお話は聞いて下さらぬでしょう。ですが皇后様の話は別です。嫻妃(かんひ)様がお話すれば噂は広まります。でも皇后様なら弟君も助かり嫻妃(かんひ)様は賢婦として名が残せます。」
純妃(じゅんひ)は言いました。
「名声が汚れるのを恐れて私が命乞いしないとでも?見くびらないで。私は誰にも頼まない。陛下が処刑なさるのは朝臣に警告するため。常寿を赦せば賄(まかない)がまかり通ことになる。民や朝臣から非難を浴びることになる。」
妃(かんひ)は答えました。
「嫻妃(かんひ)様は入宮されて長いのにずいぶんと清いのですね。滅私奉公のため弟の命まで犠牲に。でも陛下は理解しているの?」
純妃(じゅんひ)は言いました。
「流れにのまれず孤高を保つことは難しい。滅私奉公が笑われ公正な判断まで批判されているわ。私は陛下にも皇后様にもすがらない。己の本分を守り心に誠実でありたいの。手紙を書くから用がなければ帰って。」
嫻妃(かんひ)は純妃(じゅんひ)を追い払いました。
「後悔なさいませんように。」
純妃(じゅんひ)は捨て台詞を吐いて去りました。
侍女は嫻妃(かんひ)を心配しました。
「お父さまから言われたわ。常に心を正しく持てと。皇后様に頼めば皇后様の陣営に入ることになる。醜い争いに巻き込まれる。時流におもねり己を失いたくないの。わかった?」
嫻妃(かんひ)は純妃(じゅんひ)の意図を察していました。
★
永和宮。
瓔珞(えいらく)は愉貴人(ゆきじん)の寝殿に向かって声を掛けました。女性のうめき声がしたので瓔珞(えいらく)が部屋に入ってみると男が愉貴人(ゆきじん)の首を絞めていました。瓔珞(えいらく)は男に壺を投げつけ愉貴人(ゆきじん)を助けようとしました。男は瓔珞(えいらく)に襲い掛かりました。瓔珞(えいらく)は男の首に落ちていた緑の簪(かんざし)を突き刺しました。瓔珞(えいらく)は外に助けを求めましたが高貴妃(こうきひ)が現れ瓔珞(えいらく)を指さし捕らえさせようとしました。
瓔珞(えいらく)は再び部屋に逃げ込み扉に鍵をかけました。
長春宮。
富察皇后(ふちゃこうごう)は怡嬪(いひん)の死から四十九日が今日だったことを思い出しました。
永和宮。
瓔珞(えいらく)は起き上がろうとした男の頭を何度も扉に叩きつけました。そして永和宮に火をつけました。
通路。
富察傅恒(フチャふこう)は煙を見て永和宮に向かいました。
永和宮。
瓔珞(えいらく)は火事だとひたすら叫び続けました。
高貴妃(こうきひ)は瓔珞を捕らえるよう命じました。
「魏瓔珞が愉貴人を襲っていたわ!」
高貴妃は駆け付けた富察傅恒に言いました。
富察傅恒は表情を変えずに妃に挨拶しました。
高貴妃(こうきひ)は見舞に来たら瓔珞が愉貴人を殺そうとしていたと嘘をつきました。
瓔珞(えいらく)は傅恒(ふこう)に愉貴人(ゆきじん)をすぐに手当するよう頼みました。
意識のない愉貴人(ゆきじん)はすぐにその場から運び出されました。
富察傅恒(フチャふこう)は瓔珞(えいらく)に説明を求めました。瓔珞(えいらく)は皇后の命令で愉貴人(ゆきじん)に会いに来たら太監(たいかん)が貴人の首を絞めていたので太監を気絶し助けを呼ぼうとしたら高貴妃(こうきひ)に犯人にされたので狼煙を上げて助けを求めたと言いました。
傅恒(ふこう)は部下に太監を起こすよう命じました。
「誰がお前に殺害を命じた。」
傅恒(ふこう)は太監に尋ねると、太監は「皇后様に命じられました」と嘘をつきました。
「私が指図したですって?とんでもないわ。今日は怡嬪(いひん)の四十九日だったから愉貴人(ゆきじん)のことが心配になって来てみたらこのようなことになっていたとは。」
富察皇后(ふちゃこうごう)が現れました。
「この太監は皇后様に指示されたようです。」
高貴妃(こうきひ)は言いました。
「表を上げなさい。私がいつ愉貴人(ゆきじん)を殺すよう命じたの?」
皇后は太監に尋ねました。
「皇后様。皇后様は子を失い愉貴人(ゆきじん)の懐妊に嫉妬されていました。内務府を通じて私を永和宮の太監に任命して愉貴人(ゆきじん)の排除をお命じになりました。宮中の供養は禁じられています。愉貴人(ゆきじん)が人払いをした隙を狙いました。」
太監は嘘をつきました。
「見上げた度胸ね!」
富察皇后(ふちゃこうごう)は太監に声を荒げました。
爾晴(じせい)は皇后の身体を心配しました。
「皇后様の潔白は論じるまでもない。黒幕は誰だ。皇后様を陥れたら一族まで命はないぞ!」
富察傅恒(フチャふこう)が言うと、部下の海蘭察(ハイランチャ)は太監の襟を掴みました。
「皇后様だから私は従ったのです。皇后様がお認めにならないなら私は命で持って忠誠を誓いましょう。」
太監は自害しました。
海蘭察(ハイランチャ)は太監を確かめると毒を飲んで死んだと言いました。
「皇后様が愉貴人(ゆきじん)を殺すつもりならどうして私を永和宮によこしたのでしょうか。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「太監だけでは心もとなかったのかも。」
高貴妃(こうきひ)は言いました。
「大勢の太監を連れて来るなんて、愉貴人(ゆきじん)を見舞に来たというより敵討ちみたい。」
瓔珞(えいらく)は太監の体の傷は自分がやったものであり太監に襲われたのは矛盾していると言いました。
怒った高貴妃(こうきひ)は侍女に瓔珞(えいらく)を叩くよう命じました。それを爾晴(じせい)が阻止しました。
富察傅恒(フチャふこう)は高貴妃(こうきひ)に永和宮に来た理由を尋ねました。芝蘭(しらん)は愉貴人(ゆきじん)を格闘技大会の見物に誘うつもりだったが魏瓔珞(えいらく)を見て誤解してしまったと答えました。
「太監の虚言を信じていた私が悪かったです。皇后陛下様。どうか広い心でお許しください。」
高貴妃(こうきひ)は膝を突いて謝りました。
富察皇后(ふちゃこうごう)は高貴妃(こうきひ)に儲秀宮(ちょしゅうきゅう)に戻って反省するよう命じました。
高貴妃(こうきひ)は部屋から出て行きました。
愉貴人(ゆきじん)は寝床に横たわっていました。
愉貴人の侍女、芳草(ほうそう)は命令通りに持ち場を離れてしまったことを後悔して泣いていました。しばらくして愉貴人は目覚めましたがすっかり錯乱していました。
「お願いですから命だけはお助け下さい!」
愉貴人は怯えていました。
長春宮。
「傷を治す薬だ。朝と夜に自分で塗れ。おなごの身体は直視できぬ。自分で塗れ。」
富察傅恒(フチャふこう)は瓔珞(えいらく)に軟膏を渡しました。
「感謝します。しみる・・・。終わったわ。見ても大丈夫です。」
瓔珞(えいらく)は自分の手首や首に軟膏を塗りました。
「尋ねたいことがある。なぜ火を付けた。」
傅恒(ふこう)は瓔珞(えいらく)に尋ねました。
「高貴妃(こうきひ)様に殺されると叫んでも誰が信じて助けてくれますか?聞こえないふりをされるだけです。でも火事なら大勢の者が火を消しにやって来ます。それなら愉貴人(ゆきじん)も私も助かるはず。」
瓔珞(えいらく)は答えました。
「皆が来る前に捕まったら?」
傅恒(ふこう)は尋ねました。
「人事を尽くして天を待つ。死ぬ運命だったとあきらめます。」
瓔珞(えいらく)は答えました。
「運に任せるほどならどうして貴妃を問い詰めぬ。」
傅恒(ふこう)は尋ねました。
「皇后様がいらっしゃったからです。あの時の私はまさに虎の威を借りる狐でしたから。」
瓔珞(えいらく)は笑いました。
傅恒(ふこう)も微笑しました。
「初めて笑いましたね。笑わないのですか?」
瓔珞(えいらく)は尋ねました。
「不謹慎だ。あなたも母に令嬢の作法を習ったはず。」
傅恒(ふこう)は言いました。
「私は令嬢ではないし母はいません。」
瓔珞(えいらく)は答えました。
「すまない。」
傅恒(ふこう)は言いました。
「母は私を産んですぐに亡くなりました。姉が母親がわりでした。姉は私の一番大切な人です。人は誰でもいつか死にます。謝罪は不要です。薬をくださりありがとうございました。皇后様がお待ちだと思いますので失礼します。侍衛(しえい)。阿満(あまん)をご存じですか?」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「知らぬ。」
傅恒(ふこう)は答えました。
「本当はご存じでは?阿満(あまん)は私の姉だった人です。」
瓔珞(えいらく)は言いましたが傅恒(ふこう)は知らないと答えました。
皇后の部屋。
瓔珞(えいらく)は皇后に謝罪すると自ら罰を求めました。
皇后は瓔珞(えいらく)がいなかったら自分が犯人にされていたと膝をついて謝りました。
瓔珞(えいらく)は愉貴人(ゆきじん)を殺そうとした犯人が高貴妃(こうきひ)であると明言しました。
皇后は高貴妃(こうきひ)が横暴さを増していることを懸念してしましたが、証拠がありませんでした。
今回は愉貴人(ゆきじん)が姉妹同然の怡嬪(いひん)を弔おうとして法を犯したので皇帝陛下に知られてはならなかったのです。
瓔珞(えいらく)は皇后の優しさに心を動かされました。
儲秀殿。
芝蘭(しらん)は膝を突いて謝罪しました。
高貴妃(こうきひ)は犯行がバレたことを怒っていました。
そこに嘉嬪(かひん)が現れ怒りを鎮めるように諭しました。
嘉嬪(かひん)は愉貴人(ゆきじん)が錯乱していることは良い収穫だったと言いました。
そこに従者が高貴妃(こうきひ)の兄、高恒(こうこう)から預かった狆(ちん)という犬を献上しました。
高貴妃(こうきひ)は犬を雪球と名付け世話を命じました。
嘉嬪(かひん)は宮中では誰も高貴妃(こうきひ)と寵愛を競う者がいないので小者の愉貴人(ゆきじん)など放っておこうと言いました。
侍衛(しえい)の海蘭察(ハイランチャ)は太監を葬って来たが女の仕業と思えないほど打撲だらけだったと富察傅恒(フチャふこう)に報告しました。そこに高貴妃(こうきひ)の犬が走って来ました。
「貴人の犬は命より貴い。前など歩けるものか。」
傅恒(ふこう)は言いました。
「ところでなぜ陛下は鄂爾泰(オルタイ)を罰したのに仲間の高斌(こうひん)を登用したのだろう?」
海蘭察(ハイランチャ)は尋ねました。
「離間策だ。鄂爾泰(オルタイ)を封じて高斌(こうひん)を引き立てれば、高斌(こうひん)は寵愛を笠に付け上がり鄂爾泰(オルタイ)は警戒する。一つの派閥に頭は二人もいらぬだろう。いずれ仲たがいする。それが皇帝の策だ。」
傅恒(ふこう)は言いました。
夜になりました。
張女官(ちょうにょかん)は瓔珞(えいらく)の傷の手当をしました。瓔珞(えいらく)は張女官(ちょうにょかん)に傅恒(ふこう)は姉のことを知らなかったようだと言いました。
「情人は姉を捨てたけど姉は想い続けていた。傅恒(ふこう)が姉を辱めたのです。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
★
感想
瓔珞(えいらく)9話の感想です。何と主人公の瓔珞(えいらく)がいきなり高貴妃(こうきひ)の罠にかかってしまい、危うく殺されるところでした。瓔珞(えいらく)は何とか富察姉弟に助けられて何を逃れました。皇后は瓔珞(えいらく)がいなかったら自分が犯人にされていたと感謝しました。
嫻妃(かんひ)という側室は高貴ながらも父譲りの清廉潔白な女性でした。しかし弟は母に似たのか賄賂大好き人間でダメ男で処刑される寸前。嫻妃(かんひ)は乾隆帝に命乞いをすることもなく、したとしても名誉が傷つくだけで弟を助けることはできないと悟っている賢い女性です。
怪しいのが純妃(じゅんひ)というお妃です。純妃(じゅんひ)は嫻妃(かんひ)が皇后の陣営に入るよう唆していたのでした。純妃(じゅんひ)の目的は一体何なのでしょうか!?政治的な目的があって鄂爾泰(オルタイ)・高斌(こうひん)を排除したいとでもいうのでしょうか。まだまだ謎が多そうです。
今回は瓔珞(えいらく)と傅恒(ふこう)の仲が少し近づきました。傅恒(ふこう)は「拙者はおなごの体は見ぬ」と言う場面。このドラマで唯一面白かったですね。
犬になごむ高貴妃(こうきひ)も意外な一面を見せました。
嫻妃(かんひ)も純妃(じゅんひ)も教養の高さは一流です。続きが気になります。
嫻妃(かんひ)も純妃(じゅんひ)も教養の高さは一流です。続きが気になります。
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