瓔珞(えいらく)37話 懐かしき長春宮
目次
あらすじ
乾隆帝に命じられて雪の中を散歩一叩しながらの宮巡りを四刻続けた魏瓔珞(ぎえいらく)は寒さに耐えきれずに倒れてしまいました。乾隆帝は瓔珞(えいらく)を抱きかかえて養心殿に連れ帰りました。乾隆帝は「あのおなごをきれいにせよ」と李玉(りぎょく)に命じました。目覚めた瓔珞は女官たちに薄桃色の絹の服に着替えさせられました。瓔珞が部屋から出ようとすると乾隆帝とぶつかりました。
「女官が服を間違えたようです。着替えて来ます。」
瓔珞(えいらく)は皇帝に謝り装身具を外しはじめました。
乾隆帝が部屋に入ると李玉(りぎょく)は扉を閉めて部屋の外で待機しました。
瓔珞(えいらく)は服を脱ごうとしてやめました。
「着替えたいなら着替えろ。」
椅子に腰かけた乾隆帝は瓔珞を眺めました。
「陛下。私の衣は濡れてしまいました。着直してしまってはお目を汚します。」
瓔珞は言いました。
「来い。朕のもとへ早く。」
乾隆帝が命じると、瓔珞は嫌々ながらも逆らえずに一歩ずつゆっくりと前に出ました。
乾隆帝は突然瓔珞の手を引っ張りました。
「皇后に言われた。朕はお前を気に入ったと。」
「ご冗談を。後宮には美しいおなごがたくさんいます。私は洗練されていない奴婢で礼儀作法も知りません。陛下の体面を汚します。」
「ふっふっふ。考えてみれば後宮にはさまざまな花が咲き乱れている。上品な美女は見飽きた。そちのような野花に惹かれるのだ。」
「陛下。私は・・・。」
「どうした。お前は嫌か?」
「陛下。私は皇后様にお仕えしたいだけです。陛下。一時のお気持ちで皇后様を傷つけないようお願いします。それに陛下はご寛大なお方です。それに・・・。それに・・・陛下がご希望であれば国中から美女が参ります。いつでもお好みの女人を選べます。陛下が私に無理強いする必要がありません。」
瓔珞は皇帝の手を離しました。
「そちは、本当に嫌なようだな。」
皇帝は立ちあがりました。
「雀は鳳凰にはなれません。分不相応でございます。」
瓔珞は一歩下がりました。
「思うに九州の博大なる是に好みの女有らんや。朕は清の皇帝。九州の主だ。天下の美人を集めることができる。朕になびかぬおなごなど、どうでもよい。」
乾隆帝は瓔珞に近寄りました。
「仰せの通りでございます。」
瓔珞が答えると、乾隆帝は瓔珞の腰に手を回して引き寄せました。
「そう言えば満足か?よいか。無理強いするのは初めてだ。なかなか面白い。嫌がられるほど欲が出る。」
乾隆帝は瓔珞を軽々と抱きかかえると寝台に横たえました。
「陛下。」
瓔珞は慌てました。
「何だ?」
「うふふっ。陛下ぁ。実は・・・先ほどの言葉は本心ではございません。ずっと陛下のお近づきになりたかったのです。ですが後宮には美しいおなごが大勢います。卑しい私が陛下にお近づきになる機会はありません。だから陛下を刺激しました。陛下の気を引くためです。陛下。やっと私を見初めてくださいました。とても、幸せですぅ。陛下に・・・喜んでお仕えいたします。でも・・・。」
瓔珞は乾隆帝の首に手を回すと微笑みました。
「でも何だ?」
「私は側室は嫌です。私を貴人にしてください。」
「そちは浅はかだ。朕を、お前は待っていたのだな?」
「陛下ぁ。望みを叶えてください。」
「腹黒い女め。寵など与えるものか。」
乾隆帝は不機嫌になると瓔珞から身を引きました。
「陛下ぁ。あんまりでございますぅ。」
「うせろ。」
「はい。」
瓔珞は泣きながら皇帝に背を向け部屋から出ようとしました。
「待て。本日よりそちは長春宮の奴婢だ。皇后の世話をしろ。欲をかくな。いやしいおなごなどいらぬ。行け。」
乾隆帝は言いました。
「はぃ・・・。」
瓔珞は部屋から出て行きました。
長春宮。
辛者庫(しんじゃこ)の女官の服に着替えた瓔珞(えいらく)は扉を叩きました。
しかし富察皇后(ふちゃこうごう)は明玉(めいぎょく)に扉を開けないように命じました。
「皇后様。」
明玉は悲しそうに主を伺いました。
「帰らせて。」
皇后は命じました。
「瓔珞。皇后様のお言葉が聞こえた?もう行って。」
明玉は言いました。
「皇后様。この瓔珞は乾清宮から何度も跪いてここまで参りました。皇后様のもとへ戻るつもりです。皇后様。なぜ私を拒むのです?明玉。開けて。」
瓔珞が言うと、明玉は我慢できずに扉を開けてしまいました。
「皇后様。お目覚めになられた時は喜びました。お体はどうですか?」
瓔珞は富察皇后の傍に跪きました。
「あなたには関係のないことよ。」
富察皇后は冷たく言いました。
「皇后様。陛下からご命令が出ました。罪を許された瓔珞は辛者庫に戻れません。皇后様のおところしかないのです。」
「私には関係無いの。長春宮に迎えるつもりはないわ。」
富察皇后は言いました。
「皇后様。本当のことを言ってください。瓔珞のことを心配していたのになぜ追い返そうとなさるのですか?」
明玉は言いました。
「明玉。」
皇后は声を荒げました。
「皇后様。私瓔珞は何か皇后様に失礼なことをいたしましたか?」
「そうではないの。悪いのは私よ。あなたは私を守ろうとした。だから争いに巻き込まれたわ。瓔珞。お前は去りなさい。私のもとを去るの。私の脚を見て。もう立てないわ。長年の情があるから陛下は私を顧みてくれる。でもこの清に立てない皇后はいらないの。長春宮は表向きは繁栄しているけど、実は、持続すら危うい。とどまりたい者などいないわ。あなたはわかっているの?」
「皇后様。私にどこへ行けと?」
「許可するわ。皇宮を出なさい。」
「私に居場所はありません。母は私を生んで亡くなりました。父は私を恨み川へ捨てたのです。私は生き延びました。姉が私を救ったのです。姉の世話により生きながらえました。皇后様はこの瓔珞に姉のように優しかった。瓔珞は長春宮に残り生涯皇后様のお世話をいたします。」
瓔珞は泣きました。
「瓔珞。」
富察皇后は涙を流していました。
「皇后様。諦めないでください。練習すれば歩けるようになります。もし皇后様が立てなければ、瓔珞が皇后様の杖になりましょう。」
「瓔珞。」
富察皇后は瓔珞を抱き締めました。
「私を忘れないでください皇后様。」
明玉も皇后に抱きつきました。
富察家。
爾晴(じせい)は侍女と邸宅内を歩いていました。すると傅恒(ふこう)の弟、富察傅謙(フチャふけん)が爾晴(じせい)にぶつかりました。急いでいた傅謙(ふけん)は書を落としてしまいました。爾晴(じせい)は傅謙(ふけん)が書いた詩を詠みました。
「軽柔(けいじゅう)を弄し秋を成す。海棠(かいどう)開き梨花盛る。春半ばなり。王雱(おうほう)の眼児媚(がんじび)ね。私も好きな詩よ。」
爾晴は言いました。
傅謙は無言で紙を取り戻すと去りました。
侍女は傅謙について傅恒の異母弟の四若様で祖父の家で育ったと答えました。昨年科挙の試験に合格し今度は会試の準備中でした。
「清は武芸を重んじるけど知識で上に昇れるとでも?科挙で上位になっても高官にはなれないわ。」
爾晴は傅謙を見下しました。
「おっしゃる通りです。前途洋々の三若様は戸部侍郎(こぶじろう)に昇進し、四若様は足元にも及びません。」
侍女は爾晴をおだてました。
長春宮。
富察皇后(ふちゃこうごう)は瓔珞(えいらく)と一緒に茉莉花を花瓶に生けました。皇后も瓔珞も幸せそうでした。
長春宮前の通路。
徳勝は部下たちに荷物を運ばせていました。
明玉(めいぎょく)は徳勝に何事か尋ねました。
徳勝は鍾粋宮(しょうすいきゅう)の主が懐妊したので陛下が贈り物を下さったと言いました。
明玉は腹が立ちました。
長春宮。
明玉(めいぎょく)はしかめっ面をしながら純妃(じゅんひ)が懐妊したと報告しました。
「おめだたいわ。贈り物を選び純妃(じゅんひ)に届けましょう。」
富察皇后(ふちゃこうごう)は言いました。
「私は行きません。皇后様。純妃様とはお親しかったのに懐妊を皇后様隠しました。あんまりでございます。事実では?お喜びになっても嫉妬はしない皇后様を、純妃様は見限られたようですね!」
明玉は言いました。
瓔珞は黙って皇后の脚を揉んでいました。
皇后の部屋の外。
明玉(めいぎょく)は純妃(じゅんひ)と玉壺(ぎょくこ)とすれ違いました。
「純妃様。明玉は口が悪すぎます。」
玉壺は純妃に言いました。
純妃(じゅんひ)は富察皇后(ふちゃこうごう)に挨拶しました。
皇后は早く腰掛けるように促しました。
瓔珞は部屋の隅に行きました。
純妃は皇后に体調を尋ねました。
皇后は外を出歩かないように言われていると答えました。
純妃は皇后をおだてると、懐妊を先に伝えるべきだったと言いました。
玉壺は先日純妃様がお倒れになられて初めてご懐妊を知ったと釈明しました。
「純妃。気に病む必要はないわ。あなたを信じているから。大事なのは元気な子を産むことよ。」
富察皇后は静かに言いました。
長春宮の庭。
明玉は植木に八つ当たりをしていました。
「あ~。むしらないでよ。葉がなくなるわ。どうしたのよ。ご要望通り純妃(じゅんひ)がいらっしゃったじゃない。」
瓔珞は明玉に言いました。
「皇后様がお倒れになってから一度も来てなかったのよ。今日は寵愛を自慢しに来ただけ。ひどすぎる。皇后様は子を亡くしておつらいのに。」
「やめなさい。皇后様は純妃様のご懐妊を喜んでいるわ。嫌な事を蒸し返せば皇后様が傷つかれる。皇后様だってご回復すれば子を産めるでしょ。」
「どうせ私は心が狭いわよ。」
「人は高みを目指すもの。皇后様や純妃様だって同じよ。誰も傷つけなければそれでいい。明玉。怒る暇があったら一緒に杖になって!」
瓔珞は明玉の肩に手を置きました。
富察皇后(ふちゃこうごう)は歩く訓練をはじめました。
瓔珞(えいらく)と明玉(めいぎょく)は皇后の肩を支えました。
皇后が倒れてしまいました。
「無理よ。もう無理なの。」
富察皇后は弱気になっていました。
「皇后様。お母さまはお見舞いにいらっしゃるたびに泣きながらお帰りになられます。陛下も、ひそかにいらっしゃっていたのです。でも陛下は皇后様を傷つけることをおそれていつも顔を見せずにお帰りになります。皇后様。皆が皇后様を心配しています。諦めないでください。」
瓔珞は富察皇后を励ましました。
富察皇后は二人に支えられて脚の筋肉を鍛え続けました。
そして季節が廻り冬が終わりました。
富察皇后は少しずつ歩けるようになりました。
夏になりました。
富察皇后は初めて杖を捨て、庭の美しい景色を眺めることができました。
富察皇后は庭に降り立ち一歩ずつ確かな歩みを繰り出しました。
富察皇后は茉莉花の花の傍へ行きました。
瓔珞と明玉は泣きながら喜びました。
富察皇后は茉莉花を一輪摘みました。
「おめでたいのになぜ泣いてるのよ。」
瓔珞は明玉に言いました。
「だって嬉しいもの。」
明玉は瓔珞の袖で鼻水を拭いました。
富察皇后は振り返ると微笑みました。
「あなたは遠慮がないわね。」
瓔珞は明玉に言いました。
鍾粋宮(しょうすいきゅう)。
乾隆帝が純妃(じゅんひ)に会いに来ました。純妃(じゅんひ)は座ると子が腹を蹴ると言いました。
「そなたはしとやかで賢い。腹の子が男なら聡明な皇子になるであろう。女の子なら聡明で快活な皇女になるはずだ。」
「あ・・・陛下の琴が聞きたいようです。」
「朕の琴を?」
「お願いします陛下。」
「よかろう。子の頼みなら聞くしかない。」
乾隆帝は机に置かれていた琴を演奏しました。
嫻貴妃(かんきひ)輝発那拉(ホイファナラ)氏は鍾粋宮(しょうすいきゅう)に来ました。嫻貴妃(かんきひ)は琴の音色から乾隆帝がお訪ねになっていると悟り密かに帰ることにしました。
「貴妃様。純妃(じゅんひ)様は身籠っておいでです。皇子が生まれれば貴妃様より位が上がるかもしれません。」
珍児(ちんじ)は嫻貴妃(かんきひ)に言いました。
「この宮には妃嬪(ひひん)はたくさんいるわ。誰が寵愛されて誰が皇子を生むかは運次第よ。みんなのお産をいちいち邪魔するの?そんなことはできないわ。」
嫻貴妃(かんきひ)は言いました。
「貴妃様。ご冗談はおやめください。皇后様は療養中で純妃(じゅんひ)様はご懐妊中でございます。この機会を利用しては?皇子を生めば今後は安泰です。」
珍児(ちんじ)は言いました。
「愚かね。まだ時期は来ていないわ。今は後宮の管理で忙しいの。」
嫻貴妃(かんきひ)は珍児(ちんじ)のおでこを弾きました。
承乾宮。
「貴妃様を出し抜くなんて。肝が据わっているわね。」
珍児は部屋に呼びつけた管事を叱りました。
「貴妃がお命じになられた皮はすべてお届けしました。すべて最高級品です。」
管事は答えました。
「何人に頼んだの?」
嫻貴妃(かんきひ)は尋ねました。
「四人の太監です。」
管事は答えました。
「その者たちは私の父に褒美をねだったわ。父から二百両も奪ったの。内務府の者は本当に恥知らずね。」
嫻貴妃(かんきひ)は言いました。
「貴妃様。お許しください。私は存じませんでした。」
管事は跪きました。
「陛下の恩赦により父は復職し今では清廉潔白に生きている。それなのに強欲な太監にねだられ私の下賜品を銀子に替えたわ。」
嫻貴妃(かんきひ)は男を叱りました。
管事は土下座して何度も謝罪し、太監を罰すると言いました。
「一人は副管事(かんじ)だったわね。死罪にすれば空きが出るわ。」
嫻貴妃(かんきひ)は言いました。
「後任は貴妃様がお選びください。」
管事は言いました。
「袁春望(えんしゅんぼう)。」
嫻貴妃(かんきひ)は袁春望を部屋に呼びました。
「貴妃様にご挨拶を。」
辛者庫管事の袁春望は貴妃に挨拶しました。
「辛者庫での働きぶりを認めるわ。今日から劉管事(りゅうかんじ)のもとで宮中の仕事を学びなさい。」
嫻貴妃(かんきひ)は命じました。
「命を懸けてご恩に報います。」
袁春望は頭を下げました。
長春宮。
富察傅恒(ふこう)が皇后に会いに来ました。傅恒は茉莉花に水を与えている瓔珞(えいらく)を見つめました。瓔珞は傅恒に気が付きました。
「傅恒様。皇后様にお知らせします。」
瓔珞は大きく作った笑顔で傅恒に言いました。
明玉は心配そうに柱の陰から見守っていました。
瓔珞は皇后と傅恒に茶を出しました。
「瓔珞。もうお下がり。」
皇后は心配そうに瓔珞に言いました。
傅恒は所在なさそうにしていました。
瓔珞が姿を消すと、傅恒は母の目の病が悪化していて葉天士でも治せないと言いました。
「私が迷惑をかけたせいだわ。」
富察皇后は心を痛めました。
傅恒は母が皇后の健康を祈っていると言いました。
「傅恒。陛下はあなたを高く評価している。山西に遣わすつもりだとか。たった数年であなたは御前侍衛(しえい)から山西巡撫(じゅんぶ)に昇進したわ。これまでにないほどのご寵愛よ。ひとつ忠告しておくわ。華々しく出世することはよいことではないわ。」
「姉上ご安心ください。分はわきまえています。皇帝陛下のご信頼を裏切りません。」
「あなたは注意深く政務に携わってきたわ。最近爾晴(じせい)が私のところへ来て不満を言うの。政務も大事だけど家庭も顧みてと。」
「姉上。」
「叶わぬ想いは諦めなければならない。瓔珞は諦めた。あなたはおなごより未練がましいの?」
「姉上ご心配いりません。妻を不幸にさせません。」
長春宮の厨房。
瓔珞(えいらく)と明玉(めいぎょく)は菓子を作っていました。
明玉は瓔珞を心配しました。
「皇后様の脚が治ったのよ。最高の気分だわ。」
瓔珞は言いました。
「富察侍衛に会って傷ついたかと思った。」
明玉は言いました。
「都には、被災民がいるわ。都に押し寄せた被災民は汁物一杯のためにがんばってきた。生きるためにはどんなことでも譲歩しなければ。私のような卑しい者が恋に悩む余裕はない。忙しいもの。芙蓉糕(ふようこう)づくりよ!」
瓔珞は明玉の額に練り切りを貼り付けました。
「何するのよ!顔が汚れちゃったじゃない!」
明玉は怒りました。
瓔珞は笑いました。
庭の楼閣。
爾晴(じせい)は侍女の杜鵑(とけん)に祖父の来保(らいほ)に手紙を送ったか尋ねました。杜鵑(とけん)は送ったと答えました。
「傅恒(ふこう)は堅物だから私がやらないと。」
爾晴は政界への根回し工作をしていました。
爾晴は明日の夫人との花見の予定について侍女に尋ねました。杜鵑(とけん)は招待状は相手方に届いていると答えました。
「若奥様。若奥様が外にいると四若様が盗み見に来ています。もうこれで何度目かしら。」
杜鵑(とけん)は爾晴に言いました。
縁の下から傅謙(ふけん)が爾晴を見上げていました。
爾晴の視線に気づくと傅謙はすぐに去りました。
傅恒(ふこう)の書房の中。
若くて美しい侍女、清蓮(せいれん)は袖の下に忍ばせていた(傅恒のお母さんの)お守り(?)を本の中に忍ばせました。
爾晴(じせい)は傅恒(ふこう)の書房まで行きました。杜鵑(とけん)は掃除の少年以外は誰も入れないと爾晴に言いました。
清蓮(せいれん)は香り袋を見つけました。
爾晴が部屋に入って来ました。
爾晴は清蓮が何かを隠していると思いました。
傅恒(ふこう)が家に帰ってきました。
すると男の使用人が慌てた様子で清蓮(せいれん)が爾晴(じせい)に殺されそうだと言いました。
傅恒は急いで書房に行くと、清蓮は血を流して気を失っていました。
「爾晴。何をしたのだ。」
「見ての通りよ。」
「皆下がれ。」
「まだ途中よ!まだ(拷問の)途中よ!」
爾晴は体を上下に震わせて怒りました。
「そなたに恥をかかせぬために下がらせたのだ。」
「騒ぐ?私が悪いの?富察傅恒。結婚して一年が経つのにあなたは毎晩書房で寝ているわ。あの女のせいね?」
「何を言うのだ。」
「見たのよ。清蓮が寝床を整えていたわ。若い娘をはべらせ読書とは優雅ね。私は一人で寂しいの。あんまりだわ!」
爾晴は涙を流しながら怒りました。
「それは違う。」
「何が違うというのよ!」
「私が戸部に属してからは政務で忙しかった。あなたに冷たかったが清蓮は無関係だ。」
「もうあなたを信じられない。毎晩毎晩私の部屋を訪ねてくれるかと待ちわびてきたわ。私を生涯守ると約束したでしょ!おお嘘つき!」
「あなたは理性を失っている。冷静になってから話し合おう。」
「行ったらダメ。行ったらダメ。もっと私と話なさいよ!富察傅恒!富察傅恒!」
爾晴は傅恒の袖を掴むとお守りを抜き取りました。
「清蓮は無関係ですって?嘘ね。これが証拠よ!富察傅恒!」
「あなたにあげようと思っていたが、必要なかったようだな。」
傅恒は出て行きました。
「傅恒・・・。」
爾晴はみじめな気持ちになって泣きました。
傅恒(ふこう)は劉家職(さきほどの男)を呼ぶと清蓮(せいれん)の容態を尋ねました。劉家職は奥様が熱した鉄の棒で清蓮を何度も叩き両手の爪はすべて剥がされ血だらけだと答えました。
「なんと恐ろしいことを。なぜ清蓮は書房に来たのだ?」
「掃除の少年が病だったので清蓮に任せました。まさか若奥様がお越しになるとは。」
傅恒(ふこう)が行こうとすると、清蓮が血だらけの手に瓔珞が作った香り袋を乗せて傅恒に差し出しました。
清蓮は傅恒を守ったのでした。
感想
瓔珞(えいらく)37話の感想です。どこからお話しましょうか。まずは乾隆帝が瓔珞(えいらく)と交尾をしようとした場面からにしましょうか。乾隆帝は正室の富察皇后に指摘されるまで己の気持ちがわかりませんでしえた。富察皇后(ふちゃこうごう)は乾隆帝に「瓔珞のことを気に入っている」と言いました。この言い方は恋の度合いまでは現わされておらず、単に瓔珞のことを好みの雌として分類した感じです。
瓔珞が巷(ちまた)の女人(にょにん)のように高貴な男に召される喜びを表現すると、乾隆帝はやる気をなくしてしまいました。
乾隆帝は瓔珞に別の反応を期待していたようです。以前の演出からは、純妃(じゅんひ)に対しては無理にすることはなかったのですが、純妃が求めると応じていたので身分と礼儀、シチュエーションが一致していたら皇帝は寵を与えるという条件になっているのでしょう。
ともあれ、乾隆帝は下品な振舞いをする女性が嫌いなようです。
理解できないのは乾隆帝が瓔珞に散歩一叩の罰を与えたことです。乾隆帝が瓔珞と傅恒の逢瀬を黙っていれば、瓔珞が傷つけられることはなかったのです。常識で考えれば凍えて倒れた後に、あんなことやこんなことをする元気もなく寝床に横たわってもだえ苦しむのが普通の人間です。好きになった女性を大切にするどころか死ぬかもしれない罰を与える意味がわかりません。
その辺のところは中国ドラマなのでいい加減に作ってあるのでしょう。
傅恒(ふこう)は爾晴(じせい)と一度も床を共にしていないことが描かれていました。傅恒は夫としての務めを果たすと言っておきながら全然果たしていません。これはこれで嘘つき男かもしれませんが、主人公を引き立てるための演出なので仕方ないですね。でもド真面目な人が好きな相手を想っていたら、こうなることは珍しいことでもないでしょう。
仮面夫婦なんて世の中のお偉方を見てればこういうことなのかと思います。
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