瓔珞(えいらく)40話 最後の願い
目次
あらすじ
第七皇子が火事で亡くなりました。富察皇后(ふちゃこうごう)はいつまでも亡くなった皇子をあやしていました。張院判(ちょういんはん)は乾隆帝に「皇后様はお心を乱しておられますので近づいてはなりません」と説明しました。
「朕だ。皇后。永琮(えいそう)は死んだのだ。気を強く持て。」
乾隆帝は富察皇后(ふちゃこうごう)を抱き締めました。
李玉(りぎょく)が隙をついて皇子を運びだしまた。
「永琮!永琮!」
富察皇后(ふちゃこうごう)は暴れました。
「もう死んでいる。永琮は旅立ったのだ。冷静になれ。そなたが何者であるのか、自分の立場をわきまえよ。」
乾隆帝は皇后に言いました。
「私は何者ですか?陛下。教えてください。私は何者ですか?」
富察皇后(ふちゃこうごう)は尋ねました。
「そなたは私の妻で、この大清国の母だ。」
乾隆帝は当たり前のことを言いました。
「そう。私は大清国の母。皇后に擁立された時から私は皇太后様を敬った。陛下を尊重し、妃嬪(ひひん)に遇した。慎み深かったのは過ちを犯さぬため。侮られぬため。良い妻でいたのは陛下に嫌われぬため。怒らず、嫉妬せず、恨まない。陛下にかわり妃嬪たちを守った。妃嬪の子を我が子としました。ですが陛下。私は何を得ましたか?大みそかは夜に家族が集まり団らんします。そんな日に私は永琮を失いました。命がけで産んだ永琮。私がこの世で最も愛する永琮を天は奪った。なぜですか?私はこれまで一度も悪事は働いてません。なのになぜこんな目に?教えてください。陛下。」
富察皇后(ふちゃこうごう)は憔悴し切っていました。
「皇后よ。休むのだ。」
乾隆帝は言いました。
「陛下。陛下にも分からないのですか?あなたには答えられないのですね。もう私に構わないで。死なせて!息子に会いに行く!」
富察皇后(ふちゃこうごう)は庭に出ようとしました。
「眠れば済む!落ち着くのだ!縄を持て!」
乾隆帝は富察皇后(ふちゃこうごう)を捕まえました。
富察皇后(ふちゃこうごう)は寝台の上で縛られました。
「皇后。そなたは愛新覚羅(アイシンギョロ)弘暦(こうれき)の正妻だ。自由に振舞う権利はない。投げ出すこともだ。病であろうと錯乱しようとな。肝に銘じろ。そなたには責任がある。」
「責任?私の生涯で残ったのは責任だけですね?」
乾隆帝は明玉(めいぎょく)に皇后から一時も目を離さず世話をするように命じました。
乾隆帝は疲れた様子で長春宮を後にしました。
「朕こそがしきたりだ。」
乾隆帝は掟に反して永琮の葬儀を執り行うことにしました。
その時、太監が急いでひれ伏し「金川(きんせん)のサラベンが明正土司(めいせいどし)を責めたという報告が川陝(せんせん)総督張広泗(ちょうこうし)より入りました」と伝えました。
乾隆帝は和親王に永琮の葬儀を行わせ軍機大臣(ぐんきだいじん)を呼ぶよう太監に命じました。
富察家。
爾晴(じせい)は軟禁されていました。爾晴は傅恒(ふこう)が皇帝に会いに行ったと知りました。
「私は皇后の弟嫁。義母にかわって見舞に行くべきね。私は子を宿している尊い身なのよ。誰にも止められない。」
爾晴は侍女に言いました。
皇帝の部屋。
乾隆帝は九人の重臣を集めると命令を下しました。大臣たちが下がると傅恒(ふこう)は皇后を紫禁城の外で療養させてほしいと頼みました。
乾隆帝は出世よりも姉を養生させてほしいと頼む傅恒に失望しました。乾隆帝はたとえ皇后や妃嬪が死に絶えても国を治める責任を放棄せず淡々と政治を行うと言いました。
「臣下には富貴と権勢を与えるが、かわりに忠誠と犠牲を求める。必要な時には富察傅恒(フチャふこう)を戦場に送る。国と民に命を捧げさせるために。責任から逃れてはならぬ。朕もそちも。皇后を外に出すことはできぬ。たとえ死んでも皇后だからだ。」
乾隆帝は傅恒を諭しました。
長春宮。
爾晴(じせい)が見舞に来て皇后と二人きりで話したいと明玉(めいぎょく)に頼みました。明玉は入室を許しました。明玉は珍珠(ちんじゅ)に夕方門まで瓔珞(えいらく)を迎えに行くよう命じました。
魏清泰(ぎせいたい)は娘の瓔珞(えいらく)に足を洗ってもらっていました。
爾晴(じせい)が部屋から出て来て帰りました。
明玉(めいぎょく)は琥珀に見送りを命じました。
富察皇后(ふちゃこうごう)は目を開けました。
「明玉。空腹なの。何か食べたい。米菓子がいいわ。」
富察皇后はあえて時間のかかる食べ物を作るよう命じました。
富察皇后は髪も結わえず裸足のままふらふらと長春宮を抜け出しました。
「私は生涯で無数の過ちを犯しました。自由な富察家に生まれたのに皇室に嫁いで皇后となりました。第一の過ちです。後宮の手本となり掟やしきたりを守りながらも過去という夢に浸ってしまった。これが第二の過ちです。本当の自分を失い操り人形となっていたのに情を捨てられず陛下に愛されたいと願った。これが第三の過ち。そして永璉(えいれん)と永琮(えいそう)を守れず悲しみに暮れるだけで母としての務めを果たさなかった。これが第四の過ちです。世の中は無情なのに本文をわきまえるどころか君主の情を求めてしまった。人の心は情け容赦なく運命は残酷だと知らなかった。何度も裏切られてしまい一歩ずつ過ちを重ねたのよ。陛下。あなたは正しい。私はいい皇后ではないわ。」
富察皇后は塀の上に登り城を見渡しました。
「ごめんね瓔珞(えいらく)。あなたの帰りを待つ約束だったけど、もう待てないの。でもあなたには私のために喜んでほしい。これからはもう皇后ではなくなるわ。私はただの富察容音(ふちゃようおん)。ただの富察容音で終わる。」
富察皇后は飛び降りました。
瓔珞(えいらく)が帰途についていると、鐘が鳴り皇后の訃報が知らされました。
長春宮。
女官と太監たちは白い衣に着替えて庭で泣いていました。
瓔珞は皇后の死に衝撃を受けました。
明玉は瓔珞に事の経緯を説明しました。
棺には皇后の遺体が収められていました。
瓔珞は泣きました。
乾隆帝は瓔珞と明玉に皇后の顔に死に化粧させるよう命じました。
「陛下。皇后様のお顔はきれいに致しますが皇后様は装飾品を身につけることを拒まれました。きらびやかなものはいらないかと。」
瓔珞は皇帝に言いました。
「だが皇后だ。白装束では葬れぬ。」
「陛下。皇后様は身分にこだわっていませんでした。なぜ高い場所から身を投げたと?陛下。お許しください。皇后様が心おきなく旅立てるように。」
瓔珞は言いました。
乾隆帝は明玉に皇后の化粧を命じました。
「永遠に皇后なのだ。死後も務めがある。自由になれぬ。それが運命だ。」
「陛下は淡々とおっしゃるのですね。主様がご自害なさったことが大きな過ちですか?」
「皇后がこれほど弱いとは。情けない。朕は、許さぬ。」
「陛下。皇后様は寒気に侵され脚が痛くても第七皇子をご出産なさりました。それは皇后の地位をゆるぎないものにするためですか?いいえ。皇后様はご存じでした。陛下は嫡子を跡継ぎにしたいと。陛下のために皇后様は己も顧みず命まで投げ出されました。結局は・・・大晦日の夜に、子を失ったのです。引き裂かれた心の痛みはどれほどのものか。陛下。毎日養心殿にいて皇后様の絶望する叫びが聞こえませんでしえたか?皇后様は救いを求めていたのです。皇后様は心から陛下を愛し、真心で後宮の者に接した。その見返りが陛下の冷たい態度と後宮の妃嬪の陰謀だとは。皇后様は愚かでしょうか?いいえ。それどころか皇后様はとてもご聡明で誰よりも善良でした。同じ境遇の後宮のおなごを陥れることなく陛下を第一に考えていました。せめて皇后様にお与えください。陛下の心からの哀れみと愛を。なぜこれほどまでに冷酷なのですか?陛下のお心は氷でできているのですか!」
瓔珞は言いました。
「魏瓔珞は幾度も朕に楯突いた。自害を命じ皇后に殉葬せよ。」
乾隆帝は命じました。
明玉は泣いて瓔珞の助命を請いました。
「喜んで。この魏瓔珞(ぎえいらく)は皇后様の後を追うつもりです。」
瓔珞は太監と一緒に部屋から出て行きました。
「陛下。皇后様は瓔珞を一番お気に召しておられました。」
明玉は訴えました。
「最愛の奴婢だからこそ皇后に連れ添わせるのだ。明玉。化粧をさせよ。」
乾隆帝は言いました。
「嫌です。皇后様は瓔珞の幸せしか望みません。陛下は皇后様のことをわかっていません!」
明玉は化粧箱を投げ捨てると部屋の外に駆け出しました。
女官部屋。
瓔珞は皇后の恩情に免じて自害する方法を選択する機会が与えられました。瓔珞は懐刀の鞘を抜くと、李玉(りぎょく)が慌てて部屋に入って来ました。李玉は皇后様の遺書が見つかり瓔珞の命を守れと書いてあったと言いました。
乾隆帝は皇后の遺書を詠みました。遺書には瓔珞を紫禁城の外に出して自由を与える旨が書かれていました。
「魏瓔珞のことばかりだ。朕への思いはない。皇后。そなたの朕への恨みはそれほど深いのか。」
もはや乾隆帝に皇后の気持ちはわからなくなっていました。
李玉(りぎょく)は乾隆帝に皇后の訃報をどう伝えるか尋ねました。
「皇后は第七皇子逝去の悲しみで病を得た。参拝の疲れがたまり寝たきりとなって突然崩御した。」
乾隆帝は遺書を破り捨て李玉に箝口令を命じました。
乾隆帝は瓔珞の姿を二度と見たくないと言いました。
女官部屋。
李玉は瓔珞に円明園の長春仙館で皇后様の供養をするよう命じました。
富察傅恒(フチャふこう)は皇后の部屋で一人で泣いていました。
夜の承乾宮。
嫻貴妃(かんきひ)輝発那拉(ホイファナラ)氏はまた一つ蝋燭の芯を鋏で切りました。
ある日の円明園。
袁春望(えんしゅんぼう)が瓔珞(えいらく)に会いにやって来ました。袁春望は円明園に配属されたと言いました。
「内務府で嫻貴妃(かんきひ)に認められたはずでは?」
「瓔珞。俺とお前は一心同体だ。浄土だろうと地獄だろうと永遠に一緒だ。約束をしたのだから破るなよ。」
「そこまで言った?」
「大体の意味は会っている。苦楽を共にしようと言ったのだ。」
「あなたはどうかしれる。努力したのに出世の機会を棒に振るなんて。」
「覚えておけ。私は尽くしている。俺たちは円明園にいるんだぞ。絶対離れないからな。沈黙は異議なしと見なす。おい瓔珞(えいらく)。」
感想
瓔珞(えいらく)40話の感想です。またまたとんでもない事になってしまいました!ほんと信じられないくらい酷い話です。純貴妃(じゅんきひ)さんが富察皇后(ふちゃこうごう)の息子を殺して、皇后まで後追い自殺してしまいました。富察皇后(ふちゃこうごう)は皇后という立場にありながらも高貴妃(こうきひ)、純貴妃(じゅんきひ)、嫻貴妃(かんきひ)、そして子分の妃たちから妨害されて、とうとう追い詰められてしまいました。いくら躾をする立場とはいえ、言うことを聞かぬワガママで犯罪者なご夫人たちを束ねることなんて初めから無理だったのですよ!!!
乾隆帝も様子がおかしいですね。あっちのおなごだけでなくあんなおなごとも交尾をしちゃってまるでお犬様みたいに無節操・・・。人間でありながら夜のほうは人であることをお捨てになっている模様。
傅恒(ふこう)だけが唯一まともで袁春望(えんしゅんぼう)はちょっと復讐心に燃えすぎている感じですね。
瓔珞(えいらく)が皇后様の敵討ちに乗り出すのか!?明玉(めいぎょく)さんはどうなってしまったのか?
皇后様が善良すぎるから自由がなくてあの世で自由になっちゃいましたというオチですか。
中盤がこのような形で派手なフィナーレを迎えてしまいました!
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