瓔珞(えいらく)43話 寵愛と嫉妬
目次
あらすじ
「皇后様。どうして魏瓔珞(ぎえいらく)の入宮をお認めになったのですか?今に騒ぎを起こしますよ?」
珍児(ちんじ)は嫻皇后(かんこうごう)に尋ねました。
「面白いからよ。純貴妃(じゅんきひ)が調子に乗っているからちょうどいい競争相手ね。」
嫻皇后(かんこうごう)は言いました。
「皇后様。魏貴人を使って純貴妃(じゅんきひ)を抑え込むつもりですか?」
珍児(ちんじ)は言いました。
「私には味方がいない。純貴妃(じゅんきひ)を抑えられるかどうかはあの者次第よ。私は関わるつもりはないわ。魏瓔珞(ぎえいらく)を恐れるべきは純貴妃(じゅんきひ)よ。」
嫻皇后(かんこうごう)が言うと珍児(ちんじ)は納得しました。
嫻皇后(かんこうごう)は魏瓔珞(ぎえいらく)を延禧宮(えんききゅう)に住まわせることに決めました。
鍾粋宮(しょうすいきゅう)。
純貴妃(じゅんきひ)は愉妃(ゆひ)と囲碁で遊んでいました。侍女の玉壺(ぎょくこ)は皇太后が瓔珞(えいらく)を貴人にしたことに不満を漏らしました。純貴妃(じゅんきひ)は「皇太后様に失礼よ」と玉壺(ぎょくこ)に釘を刺しました。純貴妃(じゅんきひ)は富察皇后に仕えた侍女で皇太后が瑞祥を呼び起こして自分を立ててくれた魏瓔珞(ぎえいらく)を遇するのは当然だと言いました。愉妃(ゆひ)は瓔珞(えいらく)の出自が卑しいので心配は無用だと言いました。
「うふふ。あなたと、あの者は親しくなかった?」
「女官のくせにあれこれ指示してうっとしかったけど皇后様の侍女ゆえ無視できなかったのです。」
「それが本心なの?」
「当然です。女官という烙印は一生消せません。純貴妃(じゅんきひ)様があの者を排除なさりたいなら私に妙案があります。」
愉妃(ゆひ)は帰りました。
玉壺(ぎょくこ)は愉妃(ゆひ)の息子、第五皇子の命の恩人である瓔珞(えいらく)を悪く言ったのは本心からか疑問に思いました。
「愉妃(ゆひ)は信用できないわ。でも人の心は信じる。愉妃(ゆひ)が虐げられていた頃を魏瓔珞(ぎえいらく)は知り尽くしている。愉妃(ゆひ)がよい印象を抱くと思う?出世した高官が貧しかった頃の友に会いたいと思うかしら?勢いづいている時に過去を知る物が現れると針に刺されるような気持ちになるわ。」
純貴妃(じゅんきひ)は玉壺(ぎょくこ)に言いました。
延禧宮(えんききゅう)。
呉総管(ごそうかん)が瓔珞(えいらく)を宮に案内しました。
魏瓔珞(ぎえいらく)は明玉(めいぎょく)とともに門をくぐりました。
延禧宮(えんききゅう)は雑草が覆い繁り蜘蛛の巣だらけで寂れていました。
瓔珞(えいらく)はしきたり通り、明玉(めいぎょく)を通じて呉総管(ごそうかん)に褒美を渡しました。
四人の侍女と太監が並んで待っていました。
瓔珞(えいらく)が振り返ると侍女と太監は喜びの表情で挨拶しました。
「瓔珞(えいらく)!」
琥珀が馴れ馴れしい声を出して前に出ました。
「琥珀!失礼よ。立場をわきまえなさい!」
明玉(めいぎょく)は琥珀を叱りました。
「だって同じ主に仕えた仲でしょ?貴人はお忘れに?」
琥珀は拗ねました。
「明玉(めいぎょく)。疲れたから休むわ。」
瓔珞(えいらく)は明玉(めいぎょく)に扉を開けてもらいました。
「琥珀と珍珠(ちんじゅ)以外は解散して。」
明玉(めいぎょく)は命じました。
「琥珀。なぜここに?」
明玉(めいぎょく)は尋ねました。
珍珠(ちんじゅ)は二人そろって先日内務府から延禧宮(えんききゅう)に移れと命令があったと答えました。
明玉(めいぎょく)は馴れ馴れしく貴人を呼ばないように注意しました。
「名も無い妃嬪(ひひん)がかつての同僚を処罰したら恩知らずだと噂されます。明玉(めいぎょく)さんは瓔珞(えいらく)さんより務めが長く美貌もおありなのに侍女のままでいいのですか?貴人になれるのでは?」
琥珀が逆らいました。
「こんな寂れた宮殿は陛下に冷遇されている証拠ですよ?」
明玉(めいぎょく)は琥珀に今度問題を起こせば誰も助けてもらえないと注意しましたが、琥珀は瓔珞(えいらく)を舐め切っていました。
明玉(めいぎょく)は部屋に入りました。
瓔珞(えいらく)は皇太后様からたくさんの貴重な褒美を貰ったといって明玉(めいぎょく)にも見るように誘いました。明玉(めいぎょく)は琥珀の無礼な態度が許せませんでした。
「琥珀は意図的に送り込まれたのよ。動揺したら敵の思う壺だわ。」
瓔珞(えいらく)は明玉(めいぎょく)に言いました。
「無礼な琥珀に耐えられるの?」
「考えて見て。琥珀も長春宮の女官で私と対等だった。私が貴人になったから心から尽くせるはずがない。卑しい頃の私を見ているから我慢ならずに悪口を言うはずよ。」
瓔珞(えいらく)は金や玉の飾りを手に持ち眺めていました。
「でも・・・。」
「罰することはできない。以前同じ長春宮に仕えていた仲よ。罰すれば恩知らずと罵られる。」
「敵はなんて卑怯なの!」
「そうよ。だからこそ私たちは取り乱してはならないの。」
「でもこんな寂れたところにいたら陛下にも会えないし、琥珀に嫌がらさせされるかも。どうすればいい?」
「落ち着いて。」
「瓔珞(えいらく)。しばらく見ないうちに変わったわね。前ならすぐにやり返したのに。」
「素敵な腕輪。明玉(めいぎょく)にあげる。」
「瓔珞(えいらく)・・・。」
明玉(めいぎょく)は断りました。
「以前は、皇后様に守られていた。好き勝手にできた。でも皇后様はいない。何事にも慎重にならねば。」
「これからつらい日々になるかも・・・。」
明玉(めいぎょく)が庭にでると奴婢たちは掃除をしていました。
「琥珀さん。私も貴人になる夢を見たわ。」
侍女が琥珀に取り入ろうとしていました。
明玉(めいぎょく)が琥珀に内務府に行くように命じると、琥珀は内務府の役人から蔑まされるのが嫌だと断りました。
明玉(めいぎょく)は琥珀を叩こうとすると、琥珀は明玉(めいぎょく)の腕を掴んで逆らいました。
「私が行ってきます。明玉(めいぎょく)さん。怒らないで。琥珀さんも言い過ぎよ。」
珍珠(ちんじゅ)が駆け付けました。
「内務府でいじめられても知らないわよ。」
琥珀は腹を立てました。
「もう琥珀に我慢ならない!延禧宮(えんききゅう)は最も寂れて陛下の御来臨もない。至る所に草が生えていて東殿は廃屋同然だし食事は冷めていて催促しないと手当もでない。侍女たちまで主を馬鹿にし始めたわ。このまま我慢していたらただの臆病者よ!」
明玉(めいぎょく)は怒りながら瓔珞(えいらく)のもとに行きました。
「ふふふ。明玉(めいぎょく)。やっと鋭気を取り戻したわね。純貴妃(じゅんきひ)に怯えていた頃は小さくなって哀れだったわ。やっと本来のあなたに戻ったのね。私は円明園で二年を過ごし耐えることを学んだ。しばらくの我慢は本懐を遂げるためよ。行くわよ。皇太后様にお礼を言わないと飢えるところだったわ。」
瓔珞(えいらく)は明玉(めいぎょく)を連れて行きました。
寿康宮(じゅこうきゅう)。
乾隆帝が母に会いに行くと部屋の中から皇太后の笑い声と瓔珞(えいらく)の話す声が聞こえてきました。
「どこかで会ったことがある人だ。嘘おっしゃい。お前がどこで会ったというの?会ったことがなくても顔に覚えがあります。昔からの知り合いのように、久しぶりに再会したとしても構わぬのではないですか?」
瓔珞(えいらく)は右の手と左の手を人形のように使って芝居を聞かせてあげました。
「あっはっはっはっはっは。そなたは頑固な少年というより恋多き若君のようだわ。」
皇太后は笑いました。
「何の物語ですか?楽しそうですね。」
乾隆帝が部屋に入って来ました。
乾隆帝は少年の姿をした瓔珞(えいらく)を見て目が点になりました。
「ご機嫌いかがですか陛下。」
瓔珞(えいらく)が振り返って皇帝に挨拶しました。
「巷の雑書を母上に披露するとは。その姿は何だ?」
乾隆帝は不愉快になりました。
「許しておやりなさい。暇だったから話し相手になってもらっていたのよ。変装したほうが面白いわ。すべては私を喜ばせるため。面白い物語ね。陛下も一緒に聴いてみては?」
皇太后は笑いました。
「はしたないぞ。下がれ。」
皇帝は言いました。
「はい。失礼いたします。」
瓔珞(えいらく)と明玉(めいぎょく)は姿を消しました。
皇太后はさまざまな慎ましい妃を見て来たが瓔珞(えいらく)のように利口で毎日のように自分を楽しませてくれる者は初めてだと言いました。
「母上。あの者は褒めるとすぐ調子に乗るのです。お気を付けください。」
乾隆帝は言いました。
部屋。
乾隆帝は昼食を食べていました。
徳勝は妃嬪(ひひん)の宮が乗った盆を皇帝に掲げました。
乾隆帝は鍾粋宮(しょうすいきゅう)と書かれた札を裏返しました。
別の日の寿康宮(じゅこうきゅう)の門。
乾隆帝は輿に乗りました。
すると着替えた瓔珞(えいらく)が出て来て皇帝に挨拶しました。
乾隆帝は瓔珞(えいらく)を無視して門をくぐりました。
「瓔珞(えいらく)。毎日来ているのに陛下はあなたには目もくれない。」
明玉(めいぎょく)は瓔珞(えいらく)に言いました。
「今日で何日目?」
「今日でひとつきあまりよ。陛下はお声をかけてくださらない。」
「明日は来ないわ。風邪気味だから。喉が潰れて声が出ない。休ませてもらうわ。」
「何を企んでいるの?」
夜の養心殿。
「陛下。茶でございます。」
李玉(りぎょく)は読書中の乾隆帝に茶を差し出しました。
「訪ねたか?」
「何のことでしょう?魏貴人は病だそうです。」
「病?」
「なぜ魏貴人の話を?」
「失言しました。」
「散歩に行くぞ。」
乾隆帝は出かけました。
延禧宮(えんききゅう)。
瓔珞(えいらく)は咳をしていました。
琥珀が食事を持って来ました。
「熱い。」
瓔珞(えいらく)は咳き込みました。
「魏貴人は甘ったれですね。ご自分でお冷ましになったらどうですか?」
「琥珀。その言い方は無礼よ。」
「魏貴人。昔の恩義を忘れたのですか?長春宮で助け合った仲でしょう。妃嬪(ひひん)になったら都合の悪いことを忘れて私に難癖つけてばかり。厄介ね。」
「昔は同僚でも今は貴人よ。そんな態度は無礼よ。嫻皇后様に言いつけるわよ。」
「わかりました。あなたは主で私は奴婢。従えばいいんでしょ?文句があるなら飲まないで。捨てて来る。」
琥珀は瓔珞(えいらく)から食事を取り上げました。
話を聞いていた乾隆帝が琥珀の背を蹴りました。
琥珀は前に倒れてしまいました。
「陛下!お許しください!」
琥珀は命乞いをしました。
「陛下にご挨拶します。」
瓔珞(えいらく)はすぐに跪きました。
「杖刑(じょうけい)八十回にした後辛者庫(しんじゃこ)へ入れよ。」
乾隆帝は命じました。
「陛下。お許しください!陛下!」
琥珀は何度も謝りました。
「魏貴人は女官の出身だが今は朕の貴人だ。無礼は赦さぬ。皆の前で見せしめとする。」
乾隆帝は怒りました。
「つまみ出せ!」
李玉(りぎょく)は部下に命じました。
琥珀は何度も謝り瓔珞(えいらく)に助けを求めましたが太監に連れ出されました。
「いつからあのようにひ弱になったのだ。奴婢の横暴を許すとは。」
乾隆帝は瓔珞(えいらく)に尋ねました。
「陛下。琥珀は同じ長春宮に仕えていた同僚です。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「そなたは奴婢だったが今は朕の貴人だ。忘れるな。朕の体面が傷つく。」
乾隆帝そう言うと宮から出て行きました。
「はい・・・。」
瓔珞(えいらく)はそう答えるも、咳が出てしまいました。
「魏貴人。お祝い申し上げます。」
李玉(りぎょく)は謎めいた言葉を残して行きました。
瓔珞(えいらく)はため息をつきました。
延禧宮(えんききゅう)の庭。
琥珀が太監たちに叩かれていました。
珍珠(ちんじゅ)は明玉(めいぎょく)に手加減してあげたらどうかと頼みました。
「陛下を怒らせたのよ。魏貴人でもかばいきれないわ。」
明玉(めいぎょく)は言いました。
琥珀の尻から血がにじみ出ていました。
過去の場面。
「琥珀を私に仕えさせて。私につきっきりで。」
瓔珞(えいらく)は明玉(めいぎょく)に頼みました。
「でもあの女は怠けてばかりよ。」
明玉(めいぎょく)は言いました。
「怠ければ怠けるほどいいのよ。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
罰が終わり、琥珀は辛者庫(しんじゃこ)に連行されました。
「怠け者の末路をよみ見ておきなさい。無礼を働けば同じ目に遭うわよ。」
明玉(めいぎょく)は部下たちに厳しく言いました。
「肝に銘じます!心を入れ替えます。」
女官と太監は口を揃えて言いました。
瓔珞(えいらく)は部屋の中でその様子を見守っていました。
日中の寿康宮(じゅこうきゅう)。
「風邪は治ったか?」
乾隆帝は桃色の服を着た貴人の後ろ姿に向かって言いました。
「陛下にご挨拶します。」
舒嬪(じょひん)納蘭(ナーラン)氏が振り返って微笑みました。
「なぜそなたが?」
乾隆帝は尋ねました。
「ご機嫌伺いに参りました。皇太后様はお着替え中です。陛下は待ち人でも?」
「いや。」
がっかりした乾隆帝は椅子に腰かけました。
「陛下。魏貴人は毎日皇太后様に物語をお聴かせしていたそうですよ。今日は病となった貴人にかわり私がその物語を話に参りました。才子と佳人のお話ですが、風情があります。」
「うむ。」
乾隆帝は舒嬪(じょひん)の向こう側を覗き込みました。
「用があるゆえ帰る。」
乾隆帝は瓔珞(えいらく)が来ないことを確信すると、部屋から出て行きました。
「陛下。陛下。お聴きにならないのですか?暗記したのですよ?」
舒嬪(じょひん)は騒ぎました。
「はっはっはっは。愉快なおなごが現れたわね。一言も言わずに陛下のお心を掴むとは。」
皇太后が出て来ました。
「もしや、舒嬪(じょひん)のことですか?」
侍女は尋ねました。
「舒嬪(じょひん)?あっはっは。どこまで聴いたかしら続けてちょうだい。」
皇太后は微笑みました。
帰り道。
「病はまだ治らぬのか?葉天士に診せよ。」
乾隆帝は李玉(りぎょく)に命じました。
「陛下。お申し付けがなくても葉天士は貴人の治療に励んでおります。」
李玉(りぎょく)は答えました。
「養心殿に戻れ。いや。延禧宮(えんききゅう)へ。」
乾隆帝は命じました。
夜の延禧宮(えんききゅう)。
乾隆帝が庭までやって来ました。
雑草が抜かれ、既に庭が整えられていました。
「ん?梔子(くちなし)の匂いか?」
乾隆帝は呟きました。
明玉(めいぎょく)が階段から降りて来て貴人は上でお休みですと答えました。
「なぜ部屋に戻らぬ?」
「魏貴人は梔子の花を植えさせたのでそよ風が運ぶ香りを愉しみたいそうでございます。月見がてら外で休んでいれば暑さ払いもできます。」
明玉(めいぎょく)は言いました。
「愚かな。」
乾隆帝はそう言うと上を見上げました。
二階の台で瓔珞(えいらく)が横になって休んでいました。
「このようなところで寝るから風邪をひくのだ。」
乾隆帝は瓔珞(えいらく)の背を押しました。
「陛下。」
瓔珞(えいらく)は起き上がって挨拶しようとしました。
乾隆帝は瓔珞(えいらく)を引っ張ると膝の上に乗せました。
「掟に反します。」
瓔珞(えいらく)は遠慮しました。
「朕のすることは掟にかなう。」
乾隆帝はそう言うと、瓔珞(えいらく)の口を封じました。
下で見守っていた李玉(りぎょく)は皇帝の気配を察し部下と明玉(めいぎょく)を下がらせました。
海蘭察(ハイランチャ)は塀のところでうずくまっている明玉(めいぎょく)を見かけました。
「明玉(めいぎょく)!なぜ一人でこのようなところに?何があった?」
海蘭察(ハイランチャ)は尋ねました。
「過ちを犯したの。」
明玉(めいぎょく)は泣いていました。
「誰にだって過ちはあるさ。」
「あなたにはわからない。」
「分かるように言ってくれ。」
「私が巻き込まなければ瓔珞(えいらく)は二十五歳で年季明けとなり皇宮の外に出られて幸せに暮らせたわ。私のせいで台無しよ。一生紫禁城から出られない。私のせいよ。」
「明玉(めいぎょく)。わざとじゃなかっただろ?」
「いいえ。わざとよ。純貴妃(じゅんきひ)に虐げられて悔しかった。助けてほしくて瓔珞(えいらく)を巻き込んだの。私は卑怯な人間よ。」
「明玉(めいぎょく)。あなたは悪い人じゃない。自分を責めるな。純貴妃(じゅんきひ)に何をされたか知らないが困ったことがあれば私が全力で助ける。」
「本当?でも迷惑をかけるわ。」
「そんなことはない。いつでも頼ってくれ。」
「海蘭察(ハイランチャ)。ありがとう。いい人ね。一生の恩人よ。心から感謝するわ。」
明玉(めいぎょく)は海蘭察(ハイランチャ)に抱き着きまsチア。
夜が明けました。
明玉(めいぎょく)が戻って来ると女官たちは部屋の前で魏貴人に挨拶をしていました。
「魏貴人様。おめでとうございます。皇后様と純貴妃(じゅんきひ)様から祝いの品が届きました。辛抱なさったかいがありましたね。」
女官たちは部屋の中に向かって言いました。
「お下がり。」
明玉(めいぎょく)は命じると部屋の中に入りました。
「瓔珞(えいらく)。うれしい?」
「目標に一歩近づけた。嬉しいわ。」
「私も一緒にがんばる。」
「明玉(めいぎょく)。どうしたの?」
瓔珞(えいらく)は明玉(めいぎょく)の手に触れました。
「私も強くなって瓔珞(えいらく)の右腕になるの。何でも協力するわ。陛下の寵愛をつかみ取るなんてすごいわ。」
明玉(めいぎょく)は跪きました。
「ふっ。夜伽をしたくらいで寵愛を得たというの?私は陛下のおもちゃ同然よ。いずれ飽きられる。お心を掴まない限り。純貴妃(じゅんきひ)を倒すにはまだ及ばない。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
妃嬪(ひひん)たちは集まりました。
舒嬪(じょひん)は瓔珞(えいらく)が三日連続で皇帝の相手をしたくせに皇后様に挨拶もしないで思い上がっていると言いました。
慶貴人(けいきじん)陸氏は用があるので挨拶が遅れているだけだと援護しました。
「陛下が誰を寵愛なさろうと陛下の自由よ。妃嬪(ひひん)たちは尊重しなければいけないわ。あなたが寵愛されている時に私が誰かを遣わして叱ったらどう思う?」
嫻皇后(かんこうごう)は舒嬪(じょひん)をたしなめました。
「ですがおなごに四徳は欠かせずはじめに挙げられる徳目は貞順です。礼儀知らずな者が陛下のおそばにいたら災いの種となるやも。皇后様は厳しく管理なさるべきです。」
頴貴人(えいきじん)巴林(バリン)氏は言いました。
「貴人ごときに皇后様がおとがめしろと?魏貴人が節度をわきまえれば問題は起きません。皇后様はご用心が必要です。」
婉嬪(えんひん)陳(ちん)氏は言いました。
「皇后様。朝露を集めてまいりました。」
瓔珞(えいらく)が部屋に入って来ました。
「魏貴人は皇后様が身支度をなさる間に朝露を集めていたのです。朝露でお茶を淹れようと今まで御花園(ぎょかえん)にいたのです。」
珍児(ちんじ)は言いました。
「随分皇后様へのご配慮が行き届いているわね。」
舒嬪(じょひん)は偉そうに言いました。
「私が尽くすべきことですから。」
瓔珞(えいらく)は答えました。
「フン。」
舒嬪(じょひん)は笑いました。
「他に用がなければお開きにしましょう。」
嫻皇后(かんこうごう)は言いました。
「失礼いたします。」
妃嬪(ひひん)たちは立ち上がって膝を折り部屋から出て行きました。
「皇后様。あの者たちはまったく口うるさいですね。」
珍児(ちんじ)は嫻皇后(かんこうごう)に言いました。
「三日連続で陛下に召されたのだから皆が魏貴人を敵視しはじめたわ。」
嫻皇后(かんこうごう)余裕のある様子で言いました。
「三日連続というのは今までにないことですから魏瓔珞(ぎえいらく)は只者ではありません。皇后様も警戒なさったほうがいいです。」
珍児(ちんじ)は言いました。
「美しい花も見続ければ見飽きる。いくら魏瓔珞(ぎえいらく)でも永久に寵愛を得るなんて無理よ。若いおなごたちは気になって仕方がないでしょうが。」
「そのところは皇后様はご安泰ですね。放っておきましょう。」
延禧宮(えんききゅう)の庭。
嘉嬪(かひん)金氏が訪れました。
瓔珞(えいらく)は庭で嘉嬪(かひん)に挨拶しました。
「どれほどの美女か診に来たらこの程度?帰るわよ。」
嘉嬪(かひん)は嫌味を言って去りました。
「かつての嘉嬪(かひん)の妹?」
瓔珞(えいらく)は明玉(めいぎょく)に尋ねました。
明玉(めいぎょく)は嘉嬪(かひん)は宮に入ってすぐ貴人に封じられ二年もたたず宮殿の主となり純貴妃(じゅんきひ)の次に偉く舒嬪(じょひん)と同じ身分で傲慢だと説明しました。
瓔珞(えいらく)は儲秀宮(ちょしゅうきゅう)に住んでいる嘉嬪(かひん)の美貌を認め、権力を得れば侮れない相手となると明玉(めいぎょく)に言いました。
儲秀宮(ちょしゅうきゅう)。
嘉嬪(かひん)は侍女の蘭児(らんじ)を呼びつけ李総管に「嘉嬪(かひん)は重病だ。陛下に会えないと死んでしまう。」と伝えるよう命じました。
乾隆帝は日よけに気が付き輿を止めさせました。
太監は「魏貴人が陛下がお通りになる道にむしろで日よけを作れとお命じになりました。使い古したむしろなので費用はかかっていません。従者たちも日陰で休めて助かっています。」と説明しました。
李玉(りぎょく)は輿を出発させました。
「延禧宮(えんききゅう)へ。」
乾隆帝は命じました。
儲秀宮(ちょしゅうきゅう)。
嘉嬪(かひん)は蘭児(らんじ)にもっと顔色が悪くなる化粧をするよう命じました。
侍女が戻って来ました。
嘉嬪(かひん)は陛下が来たと思って床に腰かけ苦しい様子を演じ始めました。
「陛下は儲秀宮(ちょしゅうきゅう)の手前で行き先を変え延禧宮(えんききゅう)に向かわれました。」
侍女が嘉嬪(かひん)に報告しました。
嘉嬪(かひん)は腹を立てて茶碗を投げました。
延禧宮(えんききゅう)。
乾隆帝がやって来ました。
珍珠(ちんじゅ)が出迎え瓔珞(えいらく)は散歩に出かけたと言いました。
乾隆帝は珍珠(ちんじゅ)を無視して部屋に入りました。
部屋には本当に瓔珞(えいらく)はいませんでした。
瓔珞(えいらく)の机の上には花の絵が描かれてありました。
感想
瓔珞(えいらく)43話の感想です。ついにやりましたね!なんとも微妙なことになりました。乾隆帝が瓔珞(えいらく)を寵愛しました。しかも派手に三日三晩も皇帝が瓔珞のもとに通うというのですから、お妃としては嫉妬せずしていられるはずがありません。よほど瓔珞のことが気に入っていたのでしょう。それなのに乾隆帝は瓔珞に敵意を見せて虐げつつも肝心なところで救ったりして矛盾する行動を見せていましたから、その気持ちは少々幼いといいますか、恋愛の初歩段階であるかのように描かれていました。
瓔珞(えいらく)は作為的に皇太后を利用して乾隆帝の気を引きました。
いわゆる誘惑する女なのですが、人の倫理観としては悪女がする手口として世の中では一般的にそう思われている行為です。
でもやり返すためならこのドラマでは女が男を誘惑することすら正当化されているようです。
かなりモヤモヤした展開になってきました。
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