瓔珞(えいらく)47話 雪解け
目次
あらすじ
瓔珞(えいらく)は小全子(しょうぜんし)になぜ延禧宮(えんききゅう)に戻って来たのか尋ねました。小全子は令嬪と純貴妃と嘉嬪を裏切った末に八十回の杖刑(じょうけい)を申し渡され行き場が延禧宮(えんききゅう)しか無くなったと正直に釈明しました。明玉(めいぎょく)は裏切り物など不要だから出て行くように言いました。小全子はもう裏切らないので自分を役立てて欲しいと令嬪に忠誠を誓いました。瓔珞は小全子を立ちあがらせました。
「今はもう延禧宮(えんききゅう)に門番はいらないの。」
瓔珞(えいらく)は小全子(しょうぜんし)に言いました。
「令嬪様。陛下は誤解しておられます。いつか誤解が解けて返り咲く日が来るかもしれません。あきらめないでください。」
小全子(しょうぜんし)は瓔珞(えいらく)を励ましました。
瓔珞(えいらく)のもとに届けられた食事は粗末なものでした。明玉(めいぎょく)は「これは明らかな嫌がらせよ」と言って怒りました。
「小全子(しょうぜんし)が言っていたわ。紫禁城では弱い物いじめや裏切りは日常茶飯事と。あなたは分からないの?」
「納得できないわ。なぜ陛下は無実の瓔珞(えいらく)を冷遇するのよ。」
「それは傅恒(ふこう)との過去のせいよ。戦地から戻って来たから。陛下は傅恒(ふこう)を見る度に私との過去を思い出す。つらくて心が痛むんだわ。」
「それは言いがかりよ。」
「陛下は政務でお忙しい。妃嬪(ひひん)はただ陛下の伽(とぎ)をするだけの存在だもの。見た目が麗しくて従順で、陛下の疲れを癒せればそれで満足なのよ。だからこの後宮には美しくて上品で美しい花が咲き乱れている。でも時がすれば美しい花もただの別の花としか感じられない時が来る。私が嫌いなら陛下は来ないだけ。」
「それじゃ復讐どころか我が身も守れないわ。瓔珞(えいらく)。どうするつもり?」
明玉(めいぎょく)は困り果てました。
その時、純貴妃(じゅんきひ)蘇氏(そし)がやって来ました。
瓔珞(えいらく)は純貴妃(じゅんきひ)に挨拶しました。
「久しぶりね。痩せたわね。」
純貴妃(じゅんきひ)は瓔珞(えいらく)の頬に触れました。
純貴妃(じゅんきひ)は人がいなくなった延禧宮(えんききゅう)を心配しました。
瓔珞(えいらく)はこの宮が落ちぶれたら使用人が出て行くのが世の常だと言いました。
純貴妃(じゅんきひ)は瓔珞(えいらく)の刺繍を皇太后に献上したら喜ばれたので観音菩薩の刺繍をしてほしいと依頼しました。
明玉(めいぎょく)は令嬪様が(辛者庫の苦役で)手を痛めているのでと断ろうとしました。
瓔珞(えいらく)は依頼を受け入れました。
純貴妃(じゅんきひ)は帰りました。
瓔珞(えいらく)は皇太后の名を出されたら断ることはできないと明玉(めいぎょく)に言いました。
何日も過ぎました。
瓔珞(えいらく)は傷ついた手で緑の絹に見事な刺繍を施しました。瓔珞(えいらく)は手が痛くなりましたがそれでも刺繍を続けました。
明玉(めいぎょく)と小全子(しょうぜんし)と珍珠(ちんじゅ)だけが瓔珞(えいらく)の世話をしていました。
明玉(めいぎょく)は小全子(しょうぜんし)が松柏香の香りがつけてあった暖房用の炭をどこから貰って来たのか尋ねました。小全子(しょうぜんし)は内務府からだと嘘をつきましたが明玉(めいぎょく)は見逃しませんでした。
「海蘭察(ハイランチャ)様からです。」
小全子(しょうぜんし)は白状しました。
明玉(めいぎょく)は人目を避けて海蘭察(ハイランチャ)に会うと炭や鍋料理、枇杷膏をくれたことに礼を言いました。
海蘭察(ハイランチャ)は「あなたとの約束を果たしただけだ。寒いから戻って。」と明玉(めいぎょく)に言いました。
明玉(めいぎょく)が帰ると傅恒(ふこう)が出て来ました。
「炭は私が送った。だが松柏香や鍋料理、枇杷膏を送ったり小全子(しょうぜんし)に金を与えて働かせてはいけない。白状しろ。なぜ令嬪を陰ながら助けているのだ?傅恒(ふこう)。打ち明けないことが相手への思いやりか?」
海蘭察(ハイランチャ)は傅恒(ふこう)に尋ねました。
傅恒(ふこう)は返答を避けると海蘭察(ハイランチャ)に稽古の手合わせを願いました。
寿康宮(じゅこうきゅう)。
純貴妃(じゅんきひ)は見事な観音の刺繍を皇太后に献上しました。
皇太后は「繍坊はよくやったわね」と純貴妃(じゅんきひ)を褒めました。
劉女官(りゅうにょかん)は純貴妃(じゅんきひ)の下絵のうまさを褒めました。
そこに乾隆帝がやって来て刺繍を目にしました。
皇太后は生き生きとした観音を再び褒めました。
乾隆帝は観音の髪に本物の髪が刺繍されていると言いました。
「満州族は髪を切ることが不敬と考えますが漢族は髪で刺繍することは観音様への敬意の証とする伝統的な手法です。」
純貴妃(じゅんきひ)は説明しました。
「これは血の跡では?」
乾隆帝は指摘しました。
「陛下。布についた血を隠すために額に紅点を描いたのでしょう。」
劉女官(りゅうにょかん)は擁護しました。
皇太后は刺繍女官に会ってみたいと言いました。
純貴妃(じゅんきひ)はこの刺繍は一人が刺繍したのではなく何人も携わったので会うには準備が必要だと言いました。
乾隆帝と皇太后は褒美を出したいと言いました。
乾隆帝は寿康宮(じゅこうきゅう)を出ました。
「李玉(りぎょく)。繍坊は昼夜もないほど多忙なのにあれほど手間をかけられるものなのか?思えばあのおなごも繍坊にいたな。」
乾隆帝は李玉(りぎょく)に言いました。
訓練場。
傅恒(ふこう)は海蘭察(ハイランチャ)と本物の刀で闘っていました。
視察に来た乾隆帝は飛んできた刀を受け取りました。
傅恒(ふこう)と海蘭察(ハイランチャ)は跪いて挨拶しました。
乾隆帝は傅恒(ふこう)に手合わせを申しつけました。
乾隆帝の重い一撃を傅恒(ふこう)は刀で受けると転げてしまいました。
「戦うして退くのは朕への不敬である。」
乾隆帝は傅恒(ふこう)を挑発しました。
傅恒(ふこう)は一撃で乾隆帝の刀をはじき飛ばしました。
「お前はわざと負けたな。」
乾隆帝は傅恒(ふこう)に言いました。
「陛下。私は戦場で人を殺すすべを学んだゆえ陛下を傷つけるおそれがあります。」
傅恒(ふこう)はこれ以上の戦いを拒否しました。
「訥親(ナチン)が生きていた時にそちは一人で朕に会いに来た。だがそちが軍機処に来てからは皆で来るようになった。少し慎重すぎるのでは?」
乾隆帝は言いました。
「陛下。私は個人的な事で過ちを犯し、それがまた別の過ちを犯すことに繋がりました。同じ過ちを繰り返さぬように政治においても慎重に対応しているのです。」
傅恒(ふこう)は言いました。
「お前はつまり・・・もうよい。」
乾隆帝は核心部分を避けました。
「話を続けてください。あの時赦してくだされば令嬪は私の妻になったでしょう。違いますか?」
傅恒(ふこう)は尋ねました。
「富察傅恒(フチャふこう)。無礼な。」
乾隆帝は傅恒(ふこう)を刀で傷つけました。
「瓔珞(えいらく)を愛したことは陛下への侮辱かもしれません。ですが求婚は拒否され私の片思いに終わりました。」
「お前は何が言いたい。」
「昔から陛下はお心が広く寡婦だったボルジギン氏を貴人に封じられました。寡婦には寛容なのにどうして瓔珞(えいらく)の過去にこだわるのですか?」
「傅恒(ふこう)。お前は朕に殺されたいのか?」
「相手が瓔珞(えいらく)だから過去から目を背け、向き合おうとしないのです。怒りに任せて令嬪を冷遇するのは嫉妬のため己を見失ったのです。」
「富察傅恒(フチャふこう)。そちと瓔珞(えいらく)の結婚に反対したのは・・・。」
「瓔珞(えいらく)が欲深く権勢に入ろうとしたからとおっしゃるのですか?それが真実ならとっくに妃嬪(ひひん)になろうとしたはずです。なぜ誤解をお認めにならないのですか?」
「フン。朕がお前たちを引き裂いたと言いたいのか?よくもそんなことが言えるな。」
「おそれながら、陛下は感情的になっておられたのでは?」
過去。
「二人の結婚に反対するのは私情のためでは?陛下は瓔珞(えいらく)をお気に召しておいでです。妃にしたいのです。」
富察皇后(ふちゃこうごう)は乾隆帝に言いました。
「陛下。令嬪を大切にしてください。そうでなければ無理やりにでも娶らなかった私は悔やみます。失礼します。」
傅恒(ふこう)は去りました。
寿安宮(じゅあんきゅう)。
嫻皇后(かんこうごう)が弔問から出て来ると弘昼(こうちゅう)がやって来ました。
嫻皇后(かんこうごう)は和親王弘昼(こうちゅう)に会い江南の収賄事件を解決したことを褒めました。嫻皇后(かんこうごう)は裕太妃(ゆうたいひ)の侍女白霊は錯乱して安楽堂に送られたが回復は見込めないので弘昼(こうちゅう)に紫禁城から出してあげるように頼みました。
「母上を殺したのは魏瓔珞(ぎえいらく)だと百霊(はくれい)が言ったので根拠を問うつもりです。」
弘昼(こうちゅう)は言いました。
「和親王(わしんのう)。瓔珞(えいらく)は令嬪になったゆえ言葉を慎みなさい。災いを被るわよ。」
嫻皇后(かんこうごう)は言いました。
和親王は大人しく嫻皇后(かんこうごう)の言葉に従いました。
「皇后様。皇后様はお優しく善良で聡明でそのお姿は昔のままです。皇后様を娶った兄が羨ましいです。」
弘昼(こうちゅう)はおだてました。
嫻皇后(かんこうごう)は弘昼(こうちゅう)にまわりの人を大切にするよう助言しました。
通路。
瓔珞(えいらく)は明玉(めいぎょく)と歩いていました。明玉(めいぎょく)は瓔珞(えいらく)の手の傷口がまた開いているのに刺繍がまたやり直しとなったことに不満を漏らしていました。
延禧宮(えんききゅう)の門前に和親王が現れました。
「魏瓔珞(ぎえいらく)。罪を償わせてやる。」
弘昼(こうちゅう)は明玉(めいぎょく)が持っていた盆をひっくり返して絹を拾おうとした明玉(めいぎょく)の手を踏みにじりました。
瓔珞(えいらく)は弘昼(こうちゅう)を叱りました。
弘昼(こうちゅう)は恐れるものかと言い返しました。
そこに傅恒(ふこう)がやって来て弘昼(こうちゅう)の腕を掴みました。
弘昼(こうちゅう)は「何の真似だ」と傅恒(ふこう)に怒鳴りました。
「お前は功績を重ねて陛下の信頼を取り戻したのに、また昔に戻りたいのか?」
傅恒(ふこう)は弘昼(こうちゅう)に言いました。
「いいさ。いつまでお前はこの女を守れるのか見てやる!」
弘昼(こうちゅう)は負け惜しみを言って去りました。
瓔珞(えいらく)は傅恒(ふこう)を無視して帰ろうとしました。
傅恒(ふこう)は弘昼(こうちゅう)に気を付けるように言いました。
「陛下にお会いした。あなたの幸せを祈る。」
傅恒(ふこう)は言いました。
瓔珞(えいらく)はそれには答えずに去りました。
延禧宮(えんききゅう)。
小全子(しょうぜんし)は海蘭察(ハイランチャ)から貰った百木菟(びゃくずく)と白檀入りの軟膏を明玉(めいぎょく)に渡しました。明玉(めいぎょく)はそれを受け取ると刺繍をしている瓔珞(えいらく)の傍に置きました。
「私でもわかるのにあなたは気づかないの?困っている人を助けるのは簡単ではないわ。心が温かくて私を想ってくれる優しい人がいればいいのに。」
明玉(めいぎょく)は瓔珞(えいらく)に言いました。
「索倫(ソロン)侍衛(しえい)がいるじゃない?」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「あの人はいつも戦のことを考えてばかり。おなごの気持ちがわからないの。秋には熊の皮を贈るほどだもの。」
明玉(めいぎょく)は言いました。
「片付けて。火鉢も片付けておいて。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
明玉(めいぎょく)は不思議に思いました。
夜の養心殿。
乾隆帝は傅恒(ふこう)に言われたことを思い出し、自分が瓔珞(えいらく)のことを愛しているのか考えていました。乾隆帝の前に温かな炭が燃えていました。
延禧宮(えんききゅう)。
乾隆帝が宮を訪れると出迎えがありませんでした。
「誰もいないとは。けしからん奴婢だ。」
李玉(りぎょく)は言いました。
乾隆帝は李玉(りぎょく)に静かにするよう命じると、こっそり中を覗き込みました。
瓔珞(えいらく)は一人で刺繍していました。
明玉(めいぎょく)は傍でうたた寝をしていました。
瓔珞(えいらく)はお経を金色の糸で刺繍していました。凍えた手が止まり、また刺繍を続けました。
乾隆帝はその様子を確かめると黙って帰りました。
養心殿。
乾隆帝は本を読もうとしましたが瓔珞(えいらく)のことが気になって集中できませんでした。
李玉(りぎょく)は令嬪に会いに行けばどうかと尋ねました。
「朕は気にかけておらぬ。後宮の者への虐待を許さぬだけだ。内務府の奴らめ。冷遇された令嬪を虐げるとは。」
「私が必ず罰します。」
「やめろ。朕に謝らぬうちは罰せられぬ。」
「陛下。」
「暑すぎる。炭を届けて来い。ただし朕からではないぞ。」
「内務府からかわりに届けるようにと・・・・・・。」
「瑠璃灯も届けてやれ。目が悪くなる。」
延禧宮(えんききゅう)。
呉書来は荷物を届けると自らの頬を叩いて瓔珞(えいらく)に謝罪しました。
明玉(めいぎょく)は仏頂面をしながら早く帰るように言いました。
鍾粋宮(しょうすいきゅう)。
「令嬪様は皇太后様のために半月で刺繍を仕上げました。」
純貴妃(じゅんきひ)と愉妃(ゆひ)の前にお経の刺繍が届きました。
「刺繍女官の作と言われるゆえ令嬪の苦労は水の泡となります。」
愉妃(ゆひ)は言いました。
「あの者を侮ってはダメよ。どんな状況でも這い上がろうとするわ。観音様の髪が人の毛だと陛下がお気づきになられた時は焦ったわ。」
純貴妃(じゅんきひ)は言いました。
「富察皇后(ふちゃこうごう)は気が強い令嬪をかわいがったけど、守ってくれた皇后はもういません。陛下も気に留めないご様子ですね。」
愉妃(ゆひ)は言いました。
「玉壺(ぎょくこ)。せっかくだから刺繍を利用しなさい。私の刺繍の屏風と一緒に届けてちょうだい。」
純貴妃(じゅんきひ)は命じました。
養心殿。
乾隆帝は本に字を書こうとして苛立ってやめました。
李玉(りぎょく)は徳勝のもとに走って令嬪はまだお礼に来ないのか尋ねました。
「李総監。内務府からと伝えましたのでお礼には来ないと思います。」
徳勝は微笑みました。
「お前に何がわかる。陛下がお怒りだ。私には耐えられぬ。お前が行って令嬪様に頼むのだ。」
李玉(りぎょく)は徳勝に命じました。
部屋の中から皇帝が茶碗を割る音が聞こえました。
徳勝は慌てて延禧宮(えんききゅう)に行きました。
夜。
徳勝は令嬪の帰りを待っていました。
明玉(めいぎょく)は令嬪は不在でどこに行ったかわからないと答えました。
養心殿。
侍衛(しえい)が皇帝の前に跪きました。
徳勝は李玉(りぎょく)に令嬪様に会えなかったと報告しました。
李玉(りぎょく)は「既に中にいらっしゃる」と徳勝に言いました。
皇帝の部屋の中。
「張廷玉(ちょうていぎょく)め。太廟に祀れと願い出るとは。厚かましい!張廷玉(ちょうていぎょく)をここへ呼べ。」
乾隆帝は報告書を呼んで腹を立てていました。
「待て。あいつはもう高齢だ。調子に乗り過ぎて立場を忘れたまでだ。フン。老いたか。哀れだ。広東糧驛道(かんとんりょうえきどう)で明福は三万両の賄賂を受け取った。だが広東巡撫(じゅんぶ)岳浚(がくしゅん)に助けられて捜査を担当した劉統勳は吐血した。駐西蔵大臣の都統(ととう)が殺され浙東(せっとう)に大干ばつの兆しがある。そんな時に張廷玉(ちょうていぎょく)は国を顧みずに太廟に己を祀れとはけしからん。張廷玉(ちょうていぎょく)を遠方へ飛ばしてやる。」
乾隆帝はつぶやき奏上を投げました。
乾隆帝は思い直しました。
侍衛(しえい)は投げたものを持って戻りました。
「水をくれ。」
乾隆帝は侍衛(しえい)の帽子を取りました。
「魏瓔珞(ぎえいらく)?李玉(りぎょく)。来い。」
「陛下。お会いしとうございました。陛下は私が恋しくなかったのですか?」
瓔珞(えいらく)は乾隆帝に近寄りました。
「李玉(りぎょく)め。勝手なことをしいおって。その姿は何だ。無様だぞ。」
「陛下は恋しくなかったのですか?では私は失礼します。ん?帰りますよ?」
瓔珞(えいらく)が帰ろうとすると乾隆帝は瓔珞(えいらく)を膝の上に乗せました。
「朕が命じればそなたの命などとっくになくなっている。」
「陛下は嫉妬なさっているのです。」
「何だと?傅恒(ふこう)など・・・。」
「ふふっ。陛下はお心が狭いですね。まだ気になさっているのですか?確かに傅恒(ふこう)との縁談を皇后様は願われました。でも陛下が破談にしたのでは?」
「それは傅恒(ふこう)の幸せのためで私情はない。」
「陛下がそうおっしゃるなら間違いありません。陛下がわざと私の婚礼を邪魔したのでもなく嫉妬から冷遇したのでもない。寛大な陛下は私情を挟みません。」
「嘘つけ。嫌味を言ってるのだろう。」
「陛下にそう聞こえるのは嫉妬からです。陛下ぁ。過去は過去、今は今とお考えください。陛下の妃となった以上は決して陛下を裏切りません。」
瓔珞(えいらく)は乾隆帝に言いました。
感想
瓔珞(えいらく)47話の感想です。純貴妃(じゅんきひ)が瓔珞(えいらく)に断れない刺繍を依頼していじめる場面。純貴妃(じゅんきひ)も瓔珞(えいらく)の刺繍の腕を認めているようですね。乾隆帝は純貴妃(じゅんきひ)が瓔珞(えいらく)を使って観音の刺繍をさせたことを知っているのでしょうか!??その辺りがわかれば乾隆帝は純貴妃(じゅんきひ)に事情を尋ねる場面があってもいいはずなのですが。妃の位が高すぎてそこまで言えないのかもしれないし、そういう処罰は嫻皇后(かんこうごう)の仕事ということもあるかもしれませんね。
でも乾隆帝は少なくとも瓔珞(えいらく)が刺繍で写経しているところは見ているので次回に騒動があるのかも!
富察傅恒(フチャふこう)は皇帝の誤解を解くために、皇帝自身の気持ちをわざわざ皇帝に解説してあげるというたいへん面倒な役を買って出ました。こんな嫌な事は誰もやりたくありませんし、本人にとっても迷惑な話で、できるなら知らぬ顔をしておきたいのではないでしょうか?そこをあえて申し出るのは、瓔珞(えいらく)が冷遇されているので放ってはおけなかったのでしょう。恋愛関係に無いとはいえ、一度は好きになった人のことは大切にしたいですね。
乾隆帝は自ら瓔珞(えいらく)を冷遇しながら気になって様子を探りに行くというあべこべな様子を見せてます。一時冷たくしていた呉書来(ごしょらい)もすぐに手のひら返しをして瓔珞(えいらく)におべっかを使うようになりました。
人間って冷たいもので権力が届かなくなると逃げて行き、再び届き始めてそれが揺るぎのないものらしいと直感するとごまをすりに戻るという自分勝手な生き物です。
小全子(しょうぜんし)もその一人ながらも状況的にそうすることすらできなくなって瓔珞(えいらく)に飼われるしかなくなりました。
権力者にとって行き場のない者ほど飼いやすい犬はいません。
瓔珞(えいらく)が炭や軟膏を遠ざけたのは、ドラマを見ていれば明らかですが、皇帝の気を引くためです。皇帝に寵愛されなければまともな生活ができないということをこの回では描かれています。陛下を愛してなくても皇帝の気を引かないといけません。だからこそどの妃嬪(ひひん)も皇帝の気を引こうとして他の妃の邪魔をします。
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