瓔珞(えいらく)48話 非道な仕打ち
目次
あらすじ
令嬪(れいひん)魏瓔珞(ぎえいらく)は侍衛(しえい)姿で乾隆帝に会いました。そして瓔珞は皇帝に「陛下にとって魏瓔珞はとるに足らぬ者でも私は貞節を尽くして恥をさらしません。陛下。瓔珞の主は生涯で一人です。夫も生涯で一人です。疑われるのは嫌でございます。陛下がまた私を疑うなら私は二度と陛下にお会いしとうございません。」と言いました。
「そちは好き勝手だな。誰かに聞かれたら命はないぞ。」
乾隆帝は瓔珞(えいらく)に言いました。
「陛下がお怒りになるのは私が好いておられるからですね?私への冷遇は愛情の裏返しです。少し嬉しいです。」
瓔珞は愛らしく言いました。
「この朕に生意気なことを言えるのはそなただけだ。他におらぬ。」
乾隆帝は瓔珞の頬をつねりました。
「この瓔珞はこの世で唯一無二でございます。」
瓔珞は乾隆帝の頬に触れました。
乾隆帝は瓔珞の頬を撫でると口づけしようとしました。
瓔珞は乾隆帝の口を手で塞いで阻止しました。
乾隆帝は何かを口ごもりながら言いました。
「なんておっしゃったのですか?」
「二度と云わぬ。」
「おっしゃらなくても瓔珞にはわかります。そなたを誤解して悪かった。陛下。召し上げられた梔子の花をどうするおつもりですか?」
「二倍にして返してやる。いや、三倍だ。」
「わたくしの梔子はおまるの臭い消しになったので陛下に差し上げます。」
「ならばもっと美しい花を贈ろう。」
「陛下に冷遇されたせいで皆に嫌がらせをされました。御覧ください。刺繍のせいでしもやけになったのです。」
瓔珞は血が滲んでいる手を皇帝に見せました。
乾隆帝は瓔珞の傷ついた手を自らの手で包みました。
「朕は約束する。二度とそなたを誰にも虐げさせないと。」
「誰かが私の悪い噂を流したら?」
「許さぬ。死罪だ。」
乾隆帝は瓔珞に約束しました。
富察家の傅恒(ふこう)の書斎。
富察傅恒(フチャふこう)はやけ酒をあおっていました。清蓮(せいれん)は理由を尋ねました。傅恒(ふこう)は「初めて陛下を騙したのだ」と言い、瓔珞(えいらく)が小全子(しょうぜんし)の盗みに気が付きそれを利用して純貴妃(じゅんきひ)の顔に泥を塗った上に嘉嬪(かひん)に仕返しをしたことに打ち明けました。
「寵愛を受けても禍根が残っている。私は瓔珞のことで何度も陛下と意見がぶつかった。陛下のお心にわだかまりがある。私が戦場から戻り陛下は面白くなかったはずだ。陛下も男だからな。妃嬪(ひひん)へ想いを寄せることを赦すはずがない。その相手が義理の弟で側近ならばなおさらだ。私がいる限り令嬪の立場はとても危うくなる。それなら、陛下のわだかまりを解くため行動するしかない。」
傅恒は瓔珞の策について理解を示しました。
瓔珞はわざと傅恒と二人きりになり乾隆帝と嘉嬪(かひん)と誘ったのでした。瓔珞は乾隆帝の気を引くために傅恒を利用して挫折や嫉妬、焦りを学ばせたのでした。
「陛下は一度読んだ本は忘れないお方だ。即位後は張廷玉(ちょうていぎょく)と鄂爾泰(オルタイ)を抑え込み弘皙(こうせき)の謀反も阻んだ。陛下は優れたお方だ。そんなお方が本当の事に気づかぬはずがない。心惹かれる様子が面白くて愉しんでおられるだけだ。」
「でも若様に害が及びました。」
「瓔珞は何でもする。手段は択ばない。」
傅恒は酒を飲みました。
日中の養心殿。
乾隆帝は瓔珞(えいらく)の手を取り蘭の描き方を教えて遊んでいました。
「蘭の花は簡潔に描け。純貴妃(じゅんきひ)の絵を見たことはあるか?墨の色が薄いほど趣が出る。ん?違う。そなたは何をしているのだ。」
「地味な絵なんて嫌です。華やかなほうが好きです。陛下。見てください。」
瓔珞は蘭の葉に花を描き加えました。
「奇抜すぎる。」
「陛下ぁ。純貴妃様の絵がお好きなら鍾粋宮(しょうすいきゅう)へどうぞお行きになさってください。私は教養のないおなごゆえ描く絵も低俗です。」
「軽はずみなことを言ってしまった。そなたの絵は以前よりも素晴らしい。朕が悪かった。魏瓔珞は唯一無二のおなごだ。他と比べるな。これはどうだ?そなたと共に低俗になってやろう。」
乾隆帝も絵に花を描き加えました。
「前からです。」
「朕は低俗なのか?おい、どこへ行く?」
乾隆帝は部屋から出て行く瓔珞に声を掛けました。
部屋の外。
李玉(りぎょく)は瓔珞(えいらく)が乾隆帝の心を掴んだと思いました。徳勝はまだ信じられない様子でした。李玉は徳勝に皇帝の茶を持たせて「お前が確かめて来い」と言いました。
皇帝の部屋の中。
瓔珞(えいらく)が鵲華秋色図(じゃくかしゅうしょくず)を持って戻り床の上に拡げました。
「陛下はこの絵を取り戻されたのですか?一つ、二つ・・・九・・・全部で四十個以上あります。陛下が推した印です。感情の赴くままに好き勝手に押しています。効き目のない張り薬を体中に貼り付けたみたい。こんなの無意味です。」
瓔珞は乾隆帝を批判しました。徳勝は茶を運ぼうとして慌てて身を隠しました。
「無礼だぞ。」
「陛下ぁ。私が低俗と言ったのでお怒りなのでしょう?私も同じですぅ。陛下に低俗とおっしゃられると腹が立ちます。いひひ。こっちこっち。陛下も私のようにご機嫌を直してくださぁい。」
瓔珞は乾隆帝の背に抱き着きました。
「朕を挑発したら朕の詩を百回書かせるぞ。」
乾隆帝は瓔珞の頬をつねりました。
「陛下の詩は嫌いでございます。唐詩でもいいですか?」
「魏瓔珞。」
「わかりました。陛下の詩を書きます。でも私の宮殿には硯がありません。この烏金硯(うこんけん)は貴重なうえに見た目も素敵です。陛下が私にお贈りください。」
「愚かな。この烏金硯(うこんけん)は貴重ゆえ朕も一つしか持っておらぬ。」
「つん・・・。」
「持っていけ。持っていけ。まず絵を描こう。」
乾隆帝は硯を瓔珞に贈りました。
瓔珞は絵を描き始めました。
「何を描いている?」
「蟷螂(とうろう=カマキリ)。」
「蟷螂?」
「ちゃお~♪」
瓔珞は脚を描き加えました。
徳勝はそのまま引っ込み李玉(りぎょく)のもとに駆け戻りました。
「令嬪様のようなおなごは初めてです!」
「お前だけでなく私も初めて見る。後宮の妃嬪は皆しとやかでつつましい。令嬪様以外はな。」
「李総監。陛下は令嬪様に低俗とけなされ自作の詩までコケにされました。陛下は一瞬言葉に詰まっておられました。私は心臓が口から飛び出すかと思いました。令嬪様の死を覚悟したほどです!」
「そうだろうとも。皆は陛下をこのうえない存在として崇めるが令嬪様だけは接し方をお変えなられない。感情のなすままに振舞い腹が立てば不機嫌なお顔をなさる。」
「陛下に挑まれるなんて令嬪様は怖すぎます。あのような真似は誰にもできません。一歩間違えば死罪ですから!」
徳勝は肝を冷やしました。
皇宮内の道。
乾隆帝は輿に乗って移動していました。李玉(りぎょく)は純貴妃(じゅんきひ)が城内市で盗品を売っていたことの釈明がしたいという旨を伝えました。
乾隆帝は鍾粋宮(しょうすいきゅう)に行くよう命じました。
すると、凧が塀の向こう側に落ちました。
乾隆帝は太監に凧を拾って来させると、凧には元代の詩が書かれていました。
「一本の糸に私の生涯を託します。手離すもあなた様次第です。骨組みは頼りなく風に任せて飛ばされる。糸は切れてはるか遠くへ。取り戻すことも再び会うこともできません。誰の手にわたったか知る由はありません。」
乾隆帝はその詩が元代の低俗な散曲であることを知っていました。
「延禧宮(えんききゅう)に行く。純貴妃(じゅんきひ)には明日行くと伝えよ。」
乾隆帝は瓔珞のもとに向かいました。
次の日の夕暮れ。
純貴妃(じゅんきひ)蘇氏(そし)は皇帝の来訪を待ち詫びていました。玉壺(ぎょくこ)は対局の準備も陛下が好まれる書も準備しておいたと説明しました。
乾隆帝がやって来ました。
純貴妃(じゅんきひ)は乾隆帝が出してくれた詰め碁の問題と解いたと切りだしました。
乾隆帝は盗品の件の真相を突き止めたという純貴妃の話を聞きました。
純貴妃(じゅんきひ)は盗品の出所は瑠璃廠(るりしょう)にある古物商で声高く色白の髭の無い男が買ったので太監かもしれないと説明しました。
純貴妃はそれを新しい側室の陰謀だと言いました。
「私は濡れ衣を着せられもはや陛下を頼るしかありません。」
純貴妃は言いました。
乾隆帝は部屋を見回しました。
太鼓と笙(しょう)の音が聞こえてきました。
乾隆帝は音に誘われるまま鍾粋宮(しょうすいきゅう)を後にしました。
夜。
「空から曲が降って来るようだわ・・・。」
延禧宮(えんききゅう)の女官と太監たちは夜空に浮かぶ灯りに見とれていました。
「令嬪様に聞いてみろ。音が出る灯明は令嬪様の手作りらしい。」
太監は女官に言いました。
瓔珞(えいらく)は空を舞う灯明に手を合わせました。
乾隆帝がやって来ました。
女官と太監たちは静かにその場を離れました。
「陛下は鍾粋宮へ行かれたはずです。なぜこちらに?」
「そなたは朕の気をひこうとしただろう?」
「陛下何をおっしゃるのです。私は暇だったので行燈(あんどん)を作って遊んでいたのです。」
「なぜ音が鳴るのか説明してくれ。」
「さあなぜかしら?」
「ああ。さてはそなたは行燈の中に紙で膜を張ったな。だから太鼓のような音が鳴る。」
「草の簧(こう, 笙になる部分)も入れました。飛んでいくときに笙の音もします。行燈もなくなったので純貴妃様のところへどうぞ。」
「今宵は碁はせぬ。一緒に月を見よう。」
「私は疲れたので先に寝ます。ごゆっくりどうぞ。」
瓔珞は帰ろうとしました。
「待て。そなたは朕から逃げられると思うのか?」
乾隆帝は軽々と瓔珞を抱き上げました。
「何をなさるのです?このような姿を見られとうございませぬ。」
瓔珞は言いましたが乾隆帝は瓔珞と共に寝所に行きました。
李玉(りぎょく)はニヤニヤと笑いました。
承乾宮。
女官と太監たちは空を舞う行燈を見て楽しんでいました。
珍児(ちんじ)は皆を仕事に戻らせました。
「令嬪は誰よりもずる賢いです。純貴妃(じゅんきひ)様は他の妃嬪(ひひん)と寵愛を分け合ったのに、令嬪様は陛下が別の宮へ向かうといつも邪魔をします。昨日は思いを凧に託し、今日は音が出る行燈。明日は何をするかしら?」
珍児は嫻皇后(かんこうごう)に言いました。
「興味深いわね。」
「とんでもない悪女です。」
「武官は戦功で競い文官は世の中の平安で競う。妃嬪(ひひん)は寵愛で競う。入内したら競わなきゃ。」
「なぜお認めになるのです?」
「令嬪はどのような時でも思わぬ方法で高位に登り詰めるわ。繍坊では長衣で頭角を現した。長春宮では富察皇后(ふちゃこうごう)に寵愛され、永巷(えいこう)では肥桶を工夫して洗った。どんな境遇からでも這い上がってくるわ。己の実力だけに頼ってね。惜しいわ。男でなかったことが。」
「皇后様。何をお考えなのですか?」
「鍾粋宮(しょうすいきゅう)の主は悔しくて眠れぬはずよ。」
鍾粋宮(しょうすいきゅう)。
純貴妃(じゅんきひ)は机上の碁石をぶちまけて怒りました。
日中の皇后が主催する妃嬪(ひひん)たちとの会談。
舒貴人(じょきじん)納蘭(ナーラン)氏は瓔珞(えいらく)が病を理由に陛下を横取りしたと涙ながらに訴えました。
嫻皇后(かんこうごう)は陛下は偶然病を知ったので令嬪は悪くないと答えました。
「皇后様。皆にも聞いてください。令嬪がいる限り宮に入っても冷宮にいるのと同じです。」
舒貴人(じょきじん)は訴えました。
「そうです。令嬪は徳を磨くべきです。卑しいやり方で陛下の御歓心を買うなど言語道断です。」
頴貴人(えいきじん)巴林氏は言いました。
「令嬪が明の女官が梅の飾り切りを作ったと聞いて梅の実を一本分集めて失敗したら梅酒を作って養心殿に届けたのです」
婉嬪(えんひん)陳氏は言いました。蹴鞠(しゅうきく)で遊び青い漢族の衣を作りました。しかもその衣を着て月明かりの中陛下と散歩したと聞きます。」
舒貴人(じょきじん)は言いました。
「何が問題なの?」
嫻皇后(かんこうごう)は優しく尋ねました。
「明の袁貴妃(えんきひ)の真似です。袁貴妃は明を滅亡に追いやり民を苦しめました。」
瑞貴人(ずいきじん)索綽羅(ソコロ)氏は言いました。
「でも令嬪様は梅の花を模した簪を作り女官に飾らせました。令嬪様のおかげで美しい物を見て楽しめました。」
慶貴人陸氏は正直な気持ちを言いました。
「あなたは黙ってて。皇后様。令嬪は奇抜な蟷螂(とうろう)の絵を描いて陛下の書斎に飾りました。もう黙ってられません!」
舒貴人(じょきじん)は言いました。
「ふふっ。純貴妃(じゅんきひ)。さっきから黙っているのはなぜ?」
嫻皇后(かんこうごう)は尋ねました。
「妃嬪(ひひん)によって役割は異なります。皇后様は品位を保たねばなりません。私たち妃嬪は陛下をお喜びさせることが務めです。そのような技量のない者が何を言おうと無駄ですわ。皇后様。愉妃(ゆひ)より言付けがあります。皆に風邪をうつさぬよう永和宮で養生していると。」
純貴妃は他の妃嬪たちを牽制しました。
「愉妃は慎重すぎるわ。既に私に知らせたのになぜあなたに言付けを?」
嫻皇后(かんこうごう)は純貴妃に尋ねました。
「愉妃はしきたりを重んじます。今日は皇后様にご相談がございます。琉球国からの布や扇、南安国から届いた香木や漆の扇、ロシアから届いた毛織物や白絹、蘇木(そぼく)が余っています。そろそろお売りになるべきかと思います。以前は富察皇后が担当してらっしゃいましたが今はそのままになっています。」
純貴妃は言いました。
「純貴妃からやっとまともな話が聞けたわ。すぐに陛下にお知らせして売却するようにしましょう。皆も純貴妃のように冷静におなりなさい。浮足立っていたら陛下の御歓心は買えないわ。」
嫻皇后は締めくくりました。
珍児(ちんじ)が部屋に入って来て令嬪を令妃に冊封したと報告しました。
妃嬪たちは皆愕然としました。
純貴妃は拳を握りしめました。
通路。
純貴妃は傅恒(ふこう)に偶然会いました。
「君子は人の美を成す。傅恒殿は品位が高いですわね。ようやくわかったの。瓔珞は栄華を得るためにあなたに近づいたと。傅恒殿。あなたはさぞおつらいでしょう。」
純貴妃は言いました。
「純貴妃様。お謹みください。」
傅恒は言いました。
「あなたに事実を言ったまでよ。あの者あ出自も才知も私より劣っているわ。なぜあんな女に真心を尽くして傷つけても助けるのよ!」
「純貴妃様。ご自分を貶める発言はお控え下さい。ではこれにて。」
「魏瓔珞(ぎえいらく)が令妃になろうと私の邪魔はさせない。」
純貴妃は瓔珞への憎しみを傅恒に明かしました。
皇帝の部屋。
富察傅恒(フチャふこう)は乾隆帝に安寧(アニン)が税をくすねた件を調べた結果、滸墅関(こしょぜき)の任に就いていた三年間に一分五厘の税を二分五厘に引き上げ税を八千両横領していたので死罪にしなければ民が納得しないと報告しました。
「安寧(アニン)は六十八人の部下と七十九人の家人を抱えてその者たちには俸禄がありません。安寧は彼らを養うために税率を上げました。」
弘昼(こうちゅう)は傅恒(ふこう)に反対しました。
「皆が安寧に倣い税を上げれば民は生きていけぬ。」
傅恒は言いました。
「傅恒。お前は戦いに優れているが政治のことはわかっていない。清い水に魚は住まない。関所の役人を飢え死にさせる気か?」
弘昼は言い返しました。
「口論はやめろ。安寧が不正を働いたのは事実ゆえ厳しく叱責する。だが滸墅関(こしょぜき)の監督を替えることはできない。再び不正を働けば赦さぬ。」
乾隆帝は裁決しました。
養心殿の外。
「私を恨んでいるから安寧(アニン)の処罰に反対したな?」
傅恒(ふこう)は弘昼(こうちゅう)に言いました。
「私は事実を言ったまでだ。」
弘昼は言いました。
「安寧は広大な土地を持っている。知らぬとは言わせぬぞ。お前は江南の不正の件を解決したばかりだ。また挫折してほしくなかったからさっきは黙っていただけだ。」
「お前は私に感謝しろと?」
「感謝は求めていないが二度目は無い。国事を利用して私を陥れるな。お前は清の和親王だ。重い責任を担う。私憤を晴らすために正義を曲げては民が良く思わぬ。」
富察家。
福康安(フカンガ)は池に落ちたおもちゃを拾おうとして池に入りました。清蓮(せいれん)は福康安(フカンガ)を見つけるとすぐに助け出しました。
「清蓮。福康安を殺す気ね。」
爾晴(じせい)は清蓮(せいれん)を捕らえるよう命じました。
家職は帰宅した傅恒(ふこう)にこのことを報告しました。
傅恒は母に清蓮をどうしたのか尋ねました。
母は清蓮を側室にと思っていたのにもう赦せなくて売ったと答えました。
爾晴は清蓮を結婚させるために実家に帰しただけだと言いました。
母は清蓮のことは赦せないと言うと自室に戻りました。
「清蓮は無実だ。」
傅恒は爾晴に言いました。
「あなたは女心をわかっていない。清蓮は成長して色気づいた。実家に帰して嫁がせたほうがいいわ。」
「本当か?」
「清蓮を側室に迎えない限り私は虐げることはないわ。嫁入り道具を贈りこれまで通りに接するわ。あなたに気に入ってもらえるように自分を変える。」
「清蓮に嫁入り道具を贈ってやれ。」
傅恒はそう言うと部屋から出て行きました。
街。
傅恒(ふこう)は馬車から降りると知人たちに妓楼に行かないよう釘を刺しました。男たちは酒は法律で禁じられ妓楼も禁止されていると言いつつ傅恒がいなくなると妓楼に入りました。
傅恒(ふこう)は逃げる娘を見つけると馬車を止めました。娘を追いかけていた男は茶楼で働く娘だと答えました。従者は傅恒に茶楼の本質は妓楼だと言いました。男たちは馬車に富察と書かれているのを見て逃げました。傅恒は従者に銀子を娘に渡すよう命じました。男に殴られて泣いていた娘は何と清蓮(せいれん)でした。
富察家。
傅恒(ふこう)は清蓮(せいれん)を看病するよう使用人に命じました。
「お前が婚儀を見届けたはずでは!」
傅恒(ふこう)は家職を叱りました。
家職は確かに清蓮(せいれん)の出立を見送ったが妓楼に行くとは思わなかったと答えました。家職は客をとらなかったので虐げられたと言いました。
清蓮が自害したと他の侍女が叫びました。
傅恒はすぐに清蓮のもとへ駆け付けました。
「清蓮。謝るだけでなく誠意をもって埋め合わせをする。お前を陥れようとした者を必ず見つけ出す。お前の家族は私が面倒を見る。望みがあるなら言ってみろ。」
傅恒は清蓮に言いました。
「若様。私のような卑しい者はお目汚しになります。若様とお呼びするたびにお優しい顔を向けてくださいます。実は昔は少しばかり期待いたしました。でもある日、悟ったのです。若様は若様という言葉を聞きたいだけ。違いますか?皆は私のことを若様の情人だと思っています。でもそうではありません。若様はずっとたった一人を想い続けておられます。若様。ひとつだけ清蓮の願いを聞いてください。手を握っていただけませんか?」
清蓮はか細い手を傅恒に差し出しました。
傅恒(ふこう)は清蓮(せいれん)の手を握りました。
感想
瓔珞(えいらく)48話の感想です。嫻皇后(かんこうごう)と慶貴人を除くお妃たちが皆瓔珞(えいらく)に嫉妬し、爾晴(じせい)は清蓮(せいれん)に嫉妬して死に追いやってしまいました。中国においても奴婢の命はとっても軽いみたいです!?奴婢といっても上三旗の包衣なのか、何がなんだかよくわかりませんが、満州人の貴族も結構冷たいのかな!?満州民族といってもやっぱ漢人の文化に倣っているのかもしれません。
中国も一夫多妻制。日本も昭和になるまではそうだったみたいで妾制度がありました。しかしドラマを見てると女性視点では一夫一妻を望んでいるのに男性目線では一夫多妻が好きみたいですね。殿方の理想のお国、一夫多妻国家では今でも女性の外出や自由な結婚すら認めない国もあるから女性は優れた雄を選ぶ権利がないみたいですねぇ。
そんな強制的なルールの中での愛憎劇。女性にとって子を産む以外に何の幸せがあったのでしょうか。
続きを見て見たいと思います。
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