瓔珞(えいらく)53話 親蚕礼(しんさんれい)
目次
あらすじ
愉妃(ゆひ)は皇太后の命令で出家することになりました。瓔珞(えいらく)は愉妃(ゆひ)に尋ねました。
「あなたは純貴妃に近づいて私と対立させると徹底的に貴妃をやり込めたわ。第五皇子は聡明な子よ。陛下の期待も大きいわ。純貴妃が第五皇子を利用して私を陥れたと知れば陛下は激怒なさるでしょう。」
瓔珞(えいらく)は愉妃(ゆひ)に言いました。
「愉妃。なぜ黙っていたの?陛下に殺されるところだったのよ?」
明玉(めいぎょく)は言いました。
「言えるわけがないわ。私が純貴妃に近づいたのは罪の証拠を掴むため。陛下がお知りになれば私とあなたは共犯だと思われる。だから黙っていたの。」
愉妃(ゆひ)は答えました。
「愉妃。あなたはバカね。」
「瓔珞。私は力が無いの。昔大切な友が死に追いやられたのに仇を討てなかった。あなたと富察皇后が助けてくれなければ永琪(えいき)も守れなかった。私は弱いけど道理は分かる。受けた恩は必ず返すし恩人のことは死ぬまで忘れないわ。私は愚かゆえああするしかなかったの。純貴妃に取り入りあなたを害したわ。恨まないで。」
「あなたは弱くないわ。誰よりも勇敢よ。」
「私はもう紫禁城には戻れない。あなたに託したいの。」
「言わなくてもわかるわ。愉妃。」
「母の気持ちをわかってちょうだい。礼をさせて。」
愉妃(ゆひ)は瓔珞(えいらく)に土下座しました。
劉女官(りゅうにょかん)が戻って来て愉妃(ゆひ)を連れて行きました。
延禧宮(えんききゅう)。
乾隆帝が来臨しました。
袁春望(えんしゅんぼう)と明玉(めいぎょく)は皇帝に挨拶しました。
瓔珞は凧を作っていました。
「やめるのだ。そなたは怪我をしたいのか?もう作るな。」
乾隆帝は自ら凧を片付けました。
「他の者に作らせる。」
瓔珞は言いました。
「ダメだ。」
「どうしてですか?」
「なぜか?先日は琴の質に文句を言ってたな。朕が練習で使った月露知音(げつろちいん)を取り寄せた。これからはこれを使い練習せよ。」
乾隆帝は李玉(りぎょく)に琴を持参させていました。
「お受け取りくださいませ。」
李玉(りぎょく)は言いました。
「ダメよ。」
瓔珞は受け取ろうとする袁春望(えんしゅんぼう)に言いました。
「瓔珞。受け取らねば教えられぬ。」
「陛下。琴は学びません。凧を作ります。」
瓔珞(えいらく)は作業に戻りました。
「令妃様。陛下が円明園より取り寄せた琴なので大変貴重なものでございます。」
李玉(りぎょく)はがっかりした皇帝のかわりに表情を浮かべて見せました。
瓔珞は李玉を無視して作業を続けました。
乾隆帝は帰りました。
「お帰りをお見送り致します!」
袁春望(えんしゅんぼう)は大きな声で言いました。
「なぜ陛下の御厚意を無駄になさるのでしょうか?」
李玉はたまらず瓔珞に尋ね、袁春望(えんしゅんぼう)に琴を押し付けて帰りました。
「瓔珞。純貴妃が死んだ原因を知っているのに凧を作るなんてどうかしてるわ。」
明玉(めいぎょく)は言いました。
「凧を作るのをやめたら疑いが晴れるの?」
瓔珞は言いました。
「皆を出し抜くつもりね・・・陛下に逆らったと思ったからヒヤヒヤしたわ。」
明玉は複雑な表情を浮かべました。
「月露知音?いい名前ね。受け取るわ。大事に扱ってね。」
瓔珞は椅子に座って凧作りを続けました。
袁春望(えんしゅんぼう)は明玉に琴を預けました。
明玉は琴を部屋に運びました。
「お前は何のつもりだ?」
袁春望(えんしゅんぼう)はため口になりました。
「明玉が言った通りよ。皆を出し抜くの。」
「純貴妃は凧糸で死んだ。陛下は凧糸を見たがらない。何か考えがあって陛下を遠ざけたのだろう?」
「ええ。理由も無いのに苦労して手に入れた寵愛を捨てるわけないわ。」
養心殿。
「陛下ぁ。令妃様は少々頑固なお人ですが悪い人ではございません。」
李玉は皇帝に尋ねました。
「そうだ。ゆえに朕に釈明せぬから怒っておる。朕に譲歩させるつもりだ。」
乾隆帝は言いました。
「陛下。令妃様も冷静にお戻りになられたら謝りに来られるはずです。」
李玉は言いました。
「来ても中に通すな。」
乾隆帝は命じました。
城内の通路。
舒嬪(じょひん)納蘭(ナーラン)氏は慶貴人を連れて他の女官から皇帝の動向について新たな情報を仕入れました。舒嬪(じょひん)は皇帝が瓔珞(えいらく)に怒っていると思い心の隙間を埋めることを思いつきました。
夜の延禧宮(えんききゅう)の門前。
乾隆帝は門の前まで行きましたが扉は閉まっており中から誰も出て来る気配はありませんでしえた。
「朕を締め出すつもりだな!?」
乾隆帝は腹が立って徒歩で別の場所に向かいました。
御花園(ぎょかえん)。
「貴人様。本当に今夜花が咲くのですか?」
女官は舒嬪(じょひん)に尋ねました。
庭の台の上に月下美人の蕾が付いた鉢植えが置かれていました。
「数日以内に咲くはずよ。今夜だといいけど。」
「一輪の花ごときに夜を徹する必要はないかと思います。外は冷たいのでお風邪を召しますよ?」
「清らかな声は容易には出ないわ。月下美人も簡単には咲かない。簡単には咲かないから待つ価値があるの。」
舒嬪(じょひん)は言いました。
「それは袁枚(えんばい)の詩だな。」
乾隆帝がやって来ました。
「私めはご挨拶いたします。」
舒嬪(じょひん)と侍女は膝を曲げて挨拶しました。
「立つがよい。」
乾隆帝は言いました。
舒嬪(じょひん)は袁枚(えんばい)の詩は広く知られているが月下美人の花を見たことがなかったと言いました。
月下美人の花が咲きました。
舒嬪(じょひん)は花の香りを壇香にたとえ、法華経の説法はすばらしく月下美人のようだという話をしました。
乾隆帝は李玉(りぎょく)に瓔珞(えいらく)を起こして月露知音を取り戻すよう命じました。
延禧宮(えんききゅう)。
李玉(りぎょく)は門を叩いて琴の返却を求めました。
舒嬪の部屋。
舒嬪は夜伽用の薄絹の服に着替えて寝台に腰かけ事が始まるのを楽しみにしていました。
乾隆帝は瓔珞が琴を返しに来ることを期待していました。
瓔珞の部屋。
明玉(めいぎょく)は本を読んでいる瓔珞に舒嬪(じょひん)が新しい曲を作り皇帝を招いたことを知らせました。
「化粧をしてあげるから急いで養心殿に行きなさい。」
「嫌よ。もう寝る。」
瓔珞はあくびをして装身具を外しました。
舒嬪(じょひん)の隣の部屋。
「陛下。舒嬪(じょひん)がお待ちです。」
李玉(りぎょく)は乾隆帝に茶を持って来たついでに言いました。
瓔珞の部屋。
瓔珞が目を覚ますと乾隆帝が隣の部屋で琴を奏でていました。
「陛下。もう夜も遅いです。養心殿に戻られてお休みになっては?」
瓔珞は言いました。
「朕は新しい曲を覚えたゆえにそなたに聞かせてやるのだ。」
乾隆帝は言いました。
「ふっ。陛下は嘘が下手ですね。どうして夜更けに演奏を?私に言いたいことがあるのでしょう?」
「わかっていたか。」
「陛下は私が純貴妃を殺したとお疑いなのでしょう?だから私は門を閉じて反省しています。」
「そなたは殺しておらぬ。」
「皆は私を犯人と思っています。」
「そなたは敵を容赦なく追い詰める。純貴妃は冷宮に入りすべてを失った。そなたなら生かしておいて苦痛を味わせたかったはずだ。」
「陛下。それは私を叱っているのですか?嫌味を申しておられるのですか?」
「瓔珞。朕が知るそなたは心が狭い。」
「私が犯人ではないとご存じなのになぜお怒りなのですか?」
「そなたは朕に釈明しない。」
「それは過ちなのですか?」
「朕に言わないのは朕のことがどうでもよいのだ。それが赦せぬ。そなたについて考えていた。朕はそなたを愛し過ぎてはならぬと。だが再び来てしまった。魏瓔珞(ぎえいらく)。朕はそなたのために何度も掟を破り前言を撤回した。よくない兆しだ。危険すぎる。朕はこのようなことが嫌いだ。掟を守りたい。だから朕を怒らせないで欲しい。そうでないとそなたを死なせてしまうかもしれぬ。」
「陛下。これでは舒嬪(じょひん)に恨まれます。舒嬪は私が嫌いです。舒嬪(じょひん)の夜伽の機会を私がほとんど奪っているからです。今夜もそうなれば舒嬪はますます私を恨むでしょう。」
「舒嬪を忘れていた。李玉。朕は舒嬪に付き合えぬと伝えよ。寝殿に送ってやれ。それから、月下美人を贈ってやれ。」
「陛下。この月露知音は、どうなさるので?」
瓔珞は尋ねました。
乾隆帝は瓔珞の手を引っ張って行き寝床に入りました。
日中の寿康宮(じゅこうきゅう)。
嫻皇后(かんこうごう)は親蚕礼(しんさんれい)について皇太后と話し合っていました。
皇太后は浙東(せっとう)で干ばつが怒り山東(さんとう)でバッタが出たので今年は中止したいと言いました。
嫻皇后は来年のために親蚕礼を行い祈りたいと言いました。
皇太后は富察皇后の時は毎年盛大に親蚕礼を行っていたけど今の状況は祭儀を行うのにふさわしくないと言いました
嫻皇后は既に準備は整えたので中止にすると面子が潰れると暗に言いました。
「つまり私に事後報告をするつもりだったのね!私に采を下す権限があるというの?皇后は勝手すぎるのでは?」
皇太后は怒りました。
嫻皇后は謝罪し嫌ならすぐに中止すると土下座しました。
皇太后は自分の部屋に戻りました。
寿康宮(じゅこうきゅう)の庭。
弘昼(こうちゅう)が外で待っていました。
嫻皇后は泣きながら帰りました。
通路。
弘昼(こうちゅう)の部下は事情を弘昼に説明しました。
「皇太后様は皇后様を冷遇するつもりなのだな。新しき琴およばざるごとし。古き剣はおよばざるごとし。陛下は富察皇后様をまだ忘れられていない。皇太后様は那爾布のことで皇后様をお赦しになっていない。陛下と皇太后様は非情すぎる。」
弘昼は言いました。
「那爾布(ナルブ)殿の葬儀は私が行うと皇太后様に伝えるのだ。親蚕礼(しんさんれい)は、私が陛下に尋ねよう。皇后様を助ける。慣例を守るだけだ。親蚕礼を中止すれば皇太后様の体面が傷つく。必ず行わねばならぬ。」
弘昼は太監に言いました。
夕方。
呉書来をはじめ太監たちは嫻皇后に親蚕礼の道具を見せました。令妃には銀の棒が用意されました。舒嬪(じょひん)は本来格下の妃は銅の棒を使うのにどうして令妃は例外なのか尋ねました。呉書来は皇太后の命令で皇帝も了承していると答えました。
「皇子を産んでいない者が厚遇される意味がわかりません。」
舒嬪(じょひん)は嫻皇后(かんこうごう)に言いました。
「私も皇子を産んでいないわ。」
嫻皇后は答えました。
「陛下が寵愛しているのにあなたに何ができるの?」
「私には何もできません。でも皇后様が令妃の寵愛を助けているのでいつかあの者は第二の高貴妃になるかもしれません。」
「皇后様は長年陛下にお仕えされているので何事も公明正大に采されるので誰もが尊敬しています。でも令妃は内務府の包衣の出身です。皇后様とはくらべものになりません。」
舒嬪(じょひん)は慌てて皇后をおだてました。
嫻皇后はその話題を終えて、親蚕礼の打ち合わせをしました。
承乾宮。
嫻皇后(かんこうごう)は考えていました。
お茶を持って来た珍児(ちんじ)は舒嬪(じょひん)が皇后を利用して令妃(れいひ)を陥れるつもりだと言いました。
「舒嬪(じょひん)の企みはわかっているわ。皇太后様は父のことでお怒りよ。和親王のおかげで親蚕礼(しんさんれい)を行いさらにお怒りなのよ。だから令妃(れいひ)を厚遇して私に嫌がらせをしているの。」
嫻皇后(かんこうごう)は言いました。
「皇后様。皇太后様のご機嫌を損ねてまで親蚕礼(しんさんれい)を行う理由は何なのですか?」
「父上のことで輝発那拉(ホイファナラ)氏の立場が危うくなっている。親蚕礼(しんさんれい)を盛大に行う事で皆に知らせてやりたいの。皇后の地位は揺るがないと。そうしないと皆に軽んじられてしまう。」
「でも皇太后様はお赦しにならないと思います。」
「今だけ耐えていればいつかよくなる日が来るわ。」
延禧宮(えんききゅう)。
小全子(しょうぜんし)は上等の果物を持って部屋の外で待機していました。
「内務府に使いを頼んだはずだが。裏庭を掃除しろ。これからは勝手な真似はするな。お前にだけは取り入られたくない。」
袁春望(えんしゅんぼう) は小全子(しょうぜんし)に因縁をつけて下がらせました。
袁春望(えんしゅんぼう) は小全子(しょうぜんし)の手柄を横取りしました。
珍珠(ちんじゅ)は笑うと小全子(しょうぜんし)にいくら取り入っても袁春望(えんしゅんぼう) には対抗できないと言いました。
小全子(しょうぜんし)は袁春望(えんしゅんぼう) のことが気に入りませんでした。
太医院(たいいいん)。
小全子(しょうぜんし)は袁春望(えんしゅんぼう) を尾行しました。
薬剤の部屋。
袁春望(えんしゅんぼう) は薬の品質を調べている葉天士に大きな声を掛けて驚かせました。
葉天士は奴婢の不注意で薬材が虫に食われたが捨てるのは惜しいと言いました。
葉天士は用意していた薬を鶏の汁でよく煮込んで香りがしたら完成だと説明しました。
「先日お話したことを令妃(れいひ)様にもよく考えて欲しいとお伝えしてほしい。」
葉天士は小さな声で囁きました。
「葉侍医はいろいろな薬を扱っているが配合を間違えることはあるか?」
袁春望(えんしゅんぼう) は尋ねました。
「あるわけないだろ。仕事で私服は肥やさない。私はそこまで愚かではないぞ。」
葉天士は答えました。
「わかったヘマはするなよ。侍医。私を信じるなら薬をうまく処理してやる。宮中で使われる薬はどれも最高級品だ。宮の外で売ってはどうだ?虫に食われたところを取り除けば高値で売れるかも。」
「大丈夫なのか?」
「昔からのならわしだ。みんなやってる。高官も見ない振りをしてくれる。薬を売った銀子で新たな薬が買える。私に任せてくれ。」
「それはいい案だな。お前に任せるよ。」
延禧宮(えんききゅう)の厨房。
「あとは私に任せろ。」
袁春望(えんしゅんぼう) は珍珠(ちんじゅ)と交代しました。
袁春望は袖から出した薬を煎じ薬に混ぜました。
小全子は隠れてその様子を見ていました。
瓔珞の部屋。
瓔珞は明玉(めいぎょく)の刺繍を下手だと言いました。明玉(めいぎょく)は三日かけてがんばったことを強調しました。
「十日一水を画き五日一水を描く。絵や書と同じで刺繍も心を静かにして細かなところまで取り組むべきよ。一針でも刺し違えばすべてが台無しになる。彼が喜ぶ香り袋が出来るわ。」
「どうしてあなたが知ってるのよ!」
「あなたの顔に書いてある。」
「でも二度も同じ物をあげるなんて。芸がなさすぎる。」
「何かいい案はあるの?」
「あの人のお母さんに額飾りを作ったら?」
「何が好みかわからないわ。」
「好みなんてどうでもいい。額飾りを贈ることで海蘭察(ハイランチャ)にあなたの気持ちが伝わるわ。」
「わかったような、わからないような・・・。」
二人が話していると、袁春望(えんしゅんぼう)が薬を持って来ました。
瓔珞が飲もうとすると、小全子(しょうぜんし)が一生懸命な表情で毒が入っていると訴えました。
瓔珞は薬を飲みました。
「小全子。私は袁春望 を信じているわ。また嘘をついたら慎刑司(しんけいし)に送るから。明玉(めいぎょく)。小全子の俸禄を一か月没収して宮中の掟を書き写させなさい。」
瓔珞は言いました。
明玉は小全子を連れて行きました。
「お前、罰が軽すぎるぞ。」
袁春望は瓔珞に言いました。
「用心なさい。」
「わざと見せつけたのだ。奴が二度と逆らわぬように。瓔珞。お前、まだ飲むつもりか?」
「そうよ。当然よ。私に必要な薬だもの。」
瓔珞は薬を飲みました。
富察家(?)。
爾青(じせい)は椅子に腰かけていました。
部屋に仏像が置かれていました。
侍女が茶を差し入れました。
爾青(じせい)は侍女に腹を立てて茶碗を割りました。
「お前はわざと冷たい茶を持って来たわね。」
爾青(じせい)は意地悪く言いました。
「若奥様のお邪魔をせぬように外で控えておりました。」
侍女は謝りかけらを拾いはじめました。
「三千の宮女臙脂の面。幾箇か春来たりて涙痕無からん。痛いの?お前に本当の痛みがわかる?」
爾青(じせい)は侍女の手を踏みました。手に茶碗のかけらが刺さり、血が出ました。
「若奥様。私が悪うございました。」
侍女は泣きました。
傅謙(ふけん)が外から様子を見ていました。
「お黙り。誰かに聞かれた私が誤解される。待ちなさい。涙をお拭きなさい。」
爾青(じせい)は言いました。
侍女は外に出て行きました。
「今のは何ですか?」
傅謙(ふけん)が部屋に入って来ました。
「傅恒(ふこう)は私を苦しめる。一人で苦しむのは嫌よ。」
爾青(じせい)は言いました。
傅謙(ふけん)は封筒を爾青(じせい)に渡しました。
「なぜあなたがこれを?」
爾青(じせい)は文を読むと驚きました。
「あなたのお父上は尚書ですがご高齢です。私の兄は勇猛な戦士で陛下の腹心です。ヒタラ家もこのような文など無視するでしょう。無駄です。」
傅謙(ふけん)は言いました。
「ヒタラ家に無視されても他の者が助けてくれるわ。五日後に親蚕礼(しんさんれい)が行われる。私は公一等の侯爵夫人。欠席できないわ。仏堂で生涯を閉じるつもりはない。」
爾青(じせい)は言いました。
養心殿。
恰克図(キャフタ)で買った皮を官吏が買い付け一万五千両のうち二百両が余ったと呉総監は皇帝に報告しました。黒狐八十枚、白豹三十枚、貂の毛皮が五十枚でした。
乾隆帝は最も良い貂の皮を寿康宮(じゅこうきゅう)と承乾宮に届けるよう呉総管(ごそうかん)に命じました。
「海獺(うみうそ)の毛皮は買ったか?」
乾隆帝は尋ねました。
呉書来は買ったが質がよくなかったと答えました。
乾隆帝は最上質の毛皮でおなごが喜ぶ物は何か呉書来(ごしょらい)に尋ねました。
呉書来は銀色がかった狐の皮だと答えました。
乾隆帝はそれを延禧宮(えんききゅう)に届けるよう命じました。
通路。
呉書来は毛皮を部下に運ばせていました。
通りがかった舒嬪(じょひん)は毛皮を見て喜びました。
呉書来は正直に延禧宮(えんききゅう)に届けると答えました。
琥珀はおまるを運んでいると舒嬪(じょひん)にぶつかりました。
舒嬪(じょひん)はその場で二刻跪くよう命じました。
琥珀はすぐに立ち上がりました。
延禧宮(えんききゅう)。
瓔珞(えいらく)は考えていました。机に乗せた指には豪華な指輪がいくつもはめられていました。
「どうした。後悔しているのか?」
袁春望(えんしゅんぼう)は瓔珞(えいらく)に尋ねました。
「後悔していないわ。」
瓔珞(えいらく)は答えました。
「陛下はお前に首ったけだ。皇帝の体面を保ちながらもお前の気を引こうと最上級の品々を贈る。聡明だと言われる陛下がお前の企みに気が付かない。」
袁春望(えんしゅんぼう)は言いました。
感想
瓔珞(えいらく)53話の感想です。愉妃(ゆひ)が息子の永琪(えいき)を守るために自ら犠牲となり純貴妃(じゅんきひ)を倒しました。愉妃(ゆひ)は息子を瓔珞(えいらく)に預けました。瓔珞(えいらく)と愉妃(ゆひ)の関係は恩人と恩返しする人になりました。愉妃(ゆひ)は義理を重んじる人であることがこれで確定しました。
舒貴人(じょきじん)納蘭(ナーラン)氏ですが、このドラマではまだ酷い悪事は働いていないようです。今のところ、おちゃめさを伴いドラマに凡庸な雰囲気を演出するために登場しています。これから舒貴人(じょきじん)がすごい極悪人になるのかどうかまだ明らかではありません。
怪しいといえば袁春望(えんしゅんぼう) です。小全子(しょうぜんし)は瓔珞(えいらく)のご機嫌取りなので他からの関与がなければ無害な人物です。葉天士が謎の粉薬を袁春望(えんしゅんぼう) に私、それを瓔珞(えいらく)が承知で飲んでいるようです。まさか避妊薬かしらと思うのですが・・・。
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