瓔珞(えいらく)54話 悪魔の最期
目次
あらすじ
海蘭察(ハイランチャ)は明玉(めいぎょく)から貰た額当てを眺めてにやけていました。乾隆帝は額当てを奪うと「想い人からの贈り物か?それにしては不器用だな」と感想を言いました。海蘭察(ハイランチャ)は「大切なのは気持ちです」と答えました。乾隆帝は香袋の次は手巾を贈るはずだが時間の無駄だと言いました。
海蘭察(ハイランチャ)は皇帝に最近令妃(れいひ)を遠ざけていると尋ねました。
乾隆帝は令妃(れいひ)をしばらく自由にさせてやっているので行きたいところを我慢していると言いました。
李玉(りぎょく)は明玉(めいぎょく)手製の毛皮の帽子を皇帝に献上しました。その出来栄えはとても単純なものでした。李玉(りぎょく)は令妃(れいひ)寒くなったのでこの帽子を被れば暖かくなるという伝言を伝えました。
「私と同じでは?贈った毛皮で返礼するなど令妃(れいひ)様の愛情の裏返しです。」
海蘭察(ハイランチャ)は言いました。
「朕の従者がいれば寒くはない。ほれ、ぴったりだ。」
乾隆帝は文句を言いながら帽子を被りました。
通路。
明玉(めいぎょく)は珍珠(ちんじゅ)と道を歩いていました。
罰を受けて跪かされていた琥珀が目の前で倒れました。
夜。
瓔珞(えいらく)は琥珀を追い出すように明玉(めいぎょく)に言いました。
明玉(めいぎょく)は琥珀に帰るように言いました。
琥珀は辛者庫(しんじゃこ)に戻れば殺されてしまうと土下座して謝りました。
琥珀は赦してくれるなら知っている秘密を離すと言いました。
部屋。
「富察皇后様がお亡くなりになった日、爾青(じせい)さんが富察皇后様に会いに来たのです。そして茶を届けた時に聞いてしまったのです。」
過去の場面。
寝床に横たわって憔悴しきった富察皇后(ふちゃこうごう)の前で爾青(じせい)は泣きました。爾青(じせい)は第七皇子が亡くなったことを皇后に知らせました。
「第二皇子の命日の夜、陛下がそばにいました。傅恒(ふこう)に叱られた私は考えました。傅恒(ふこう)は陛下の勅命で私を娶ったのだから陛下のお口添えがあれば私に優しくしてくださると思いました。私は偏殿に行きました。陛下は酔われて私に手をお出しになられるとは。このことが富察家に知られたら私はおしまいです。しかも私は子を身籠りました。」
爾青(じせい)はさらに言いました。
「酷い!ひど過ぎる!」
富察皇后は爾青(じせい)を叩きました。
「私を死なせてください。それで富察家の体面が保てます。」
爾青(じせい)は言いました。
「体面?富察家にそんなものはもう無いわ。お前のせいよ。すべてお前が悪いの。お前の顔など二度と見たくない。」
富察皇后は言いました。
「皇后様。でも先に手を出したのは陛下のほうでございます。」
爾青(じせい)は泣きました。
「どうして私の近くにいる人たちは、次から次へと私を裏切るの?どうして皆が揃って私をこんなに苦しめるの?どうしてなの?」
富察皇后は苦しみました。
「私がお義母様に報告して罰を受けます。」
爾青(じせい)は冷たい表情で言いました。
「待ちなさい。わかって?今話したことは、お母さまに言わないで。永久に皇宮に来ることを禁じるわ。出て行って。」
富察皇后(ふちゃこうごう)は疲れ果てました。
琥珀は身を隠しました。
琥珀はすべてを瓔珞(えいらく)に語り終えました。
瓔珞(えいらく)はすぐには信じられませんでした。
琥珀はあの日に爾青(じせい)の肌着を明玉(めいぎょく)に見られたことを打ち明けました。
琥珀はあんなことが起きるとは思っておらず恐ろしくて離せなかったと謝りました。
瓔珞(えいらく)は小全子(しょうぜんし)を呼ぶと琥珀を隔離して誰とも合わせないように命じました。
瓔珞(えいらく)は戦慄を覚えました。
「爾青(じせい)のような者は刀で斬り殺すべきよ。」
明玉(めいぎょく)は言いました。
「すべての黒幕の正体がヒタラ爾青(じせい)だったとは・・・・!」
瓔珞(えいらく)は大きな衝撃を受けました。
朝の延禧宮(えんききゅう)。
瓔珞(えいらく)が食事をしていると李玉(りぎょく)が挨拶に来ました。李玉(りぎょく)は陛下からの贈り物を届けました。
「陛下は朝会のため来られません。マガモの焼き物です。銀皿に盛った前菜です。ツバメの巣の汁物と白米でございます。」
李玉(りぎょく)は丁寧に説明しました。
瓔珞(えいらく)は少し食べると床に跪きました。
「陛下に感謝します。料理を運び終えたら李総管はお戻りください。」
瓔珞(えいらく)は淡々と言いました。
李玉(りぎょく)は瓔珞(えいらく)も明玉(めいぎょく)も豪華な食事を見ても暗い表情のままだったのでがっかりして帰りました。
はらわた煮えくりかえる瓔珞(えいらく)は皇帝から貰った食事をひっくり返しました。
養心殿の執務室。
李玉(りぎょく)は「忠勇公夫人が朝見になるそうです・・・」と皇帝に話しかけました。
延禧宮(えんききゅう)。
瓔珞(えいらく)は儀礼用の黒い服を着て明玉(めいぎょく)と琥珀に飾りを付けてもらいました。
養心殿。
「傅恒(ふこう)が奴婢を愛したので私と不仲になりました。奴婢の戯言で傅恒(ふこう)が福康安(フカンガ)の出生を疑い離縁すると言われました。陛下から賜った縁談を破談にすることはできません。傅恒(ふこう)はお義母様に叱られた仕返しをするため私を仏堂に閉じ込めました。お義母様が病に伏せっても傅恒(ふこう)は知らぬふりです。親蚕礼(しんさんれい)を理由に屋敷を抜け出し陛下にお願いすることになりました。」
爾青(じせい)は皇帝に訴えました。
「爾青(じせい)。正直に申せ。子の父は?」
乾隆帝は言いました。
「私は以前、罪を犯しました。でもそれは昔のことです。今では富察家の正室として夫の出征中は家を守り義父母に尽くしてまいりました。人の道には外れていません。陛下。私はここで誓います。福康安(フカンガ)は間違いなく傅恒(ふこう)の子です。しかしどう釈明しても傅恒(ふこう)は信じず私と福康安(フカンガ)を引き離しました。家臣の私事とはいえ陛下がお命じになられた縁談です。どうかお口添えをお願いします。子と離れたくないのです。」
爾青(じせい)は訴えました。
「よい。もう下がれ。」
乾隆帝は顔をそむけました。
「陛下。お怒りですか?どうかお情けに免じて私をお赦しください。」
爾青(じせい)は跪いたまま皇帝の前まですり寄りました。
「朕とそなたの間に情など無い。」
乾隆帝は冷たく言いました。
「私めが悪うございました。言葉が過ぎました。お赦しください。母を持つ者として言わせてください。福康安(フカンガ)と私を引き離さないでください。」
爾青(じせい)は顔をしわくちゃにして懇願しました。
「これから考えるゆえそなたは下がれ。」
乾隆帝は言いました。
「陛下に感謝します。」
爾青(じせい)はハンカチを手にしたまま部屋を出ました。
李玉(りぎょく)は太監に爾青(じせい)を親蚕殿(しんさんでん)に案内させました。
「先ほどとは別人のようだ。」
李玉(りぎょく)は爾青(じせい)の冷たい様子を見てつぶやきました。
通路。
太監は爾青(じせい)を案内していました。
「親蚕殿(しんさんでん)への道ではないわ。どこへ行く気?」
爾青(じせい)は太監に言いました。
「令妃(れいひ)様のご命令で別の場所へ参ります。」
太監は答えました。
「皇后様が親蚕殿(しんさんでん)で次式を行うのよ。遊んでいる暇はないわ。」
爾青(じせい)は戻ろうとしました。
「忠勇公夫人様。どちらへ参られるのですか?」
袁春望(えんしゅんぼう) は二人の太監を引き連れ爾青(じせい)に挨拶しました。
富察皇后(ふちゃこうごう)の遺影の前。
爾青(じせい)は太監たちに連れて来られました。
瓔珞(えいらく)と明玉(めいぎょく)が現れました。
「故人との再会は喜ばしいことなのに、あなたの表情は少しも嬉しくなさそうだわ。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「令妃(れいひ)。今日は親蚕殿(しんさんでん)よ。私を長春宮に連れて来るとはどういうつもり?」
「さあね。」
「誰よりも陛下に寵愛されあなたは前途洋々ね。でも自分の立場を忘れないで頂戴。」
「フン・・・。」
「私を甘く見ないほうがいいわよ。図に乗っていると容赦しないわよ。本性を陛下に知らせてやるわ。それでも令妃(れいひ)様は変わらず寵愛されるかしら?」
爾青(じせい)は瓔珞(えいらく)に近寄りました。
「爾青(じせい)。後ろを見てちょうだい。主に顔向けできるの?」
明玉(めいぎょく)は言いました。
「明玉(めいぎょく)。私たちの情を忘れたの?」
「情?ありもしない情のせいで私はあなたに苦しめられた。あなたの冷酷な本性を見抜けなかった私が愚かだった。」
明玉(めいぎょく)は言いました。
「何のことかしら?親蚕礼が始まるわ。もう行かないと。」
爾青(じせい)は部屋を出ようとしました。
袁春望(えんしゅんぼう) たちが阻みました。
「魏瓔珞(ぎえいらく)!一等侯爵夫人を捕らえるつもり?」
爾青(じせい)は瓔珞(えいらく)に怒鳴りました。
「どうしたの?あなた怖いの?」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「怖いですって?」
爾青(じせい)は醜い声で言いました。
「主を欺いたことを明らかにするわ。爾青(じせい)。私たちが長春宮で皇后様から受けたご恩を忘れたの?」
明玉(めいぎょく)は厳しい口調で言いました。
「覚えているわ。」
爾青(じせい)は皇后の遺影を眺めました。
「ならどうしてあんな酷い仕打ちをしたの?」
明玉(めいぎょく)は尋ねました。
「皇后様のご自害と私は関係無いわ。」
爾青(じせい)は言いました。
「皇后様は、突然お子を失い絶望していた。何があっても、あの方を追い詰めてはいけなかった。あなたは長春宮で皇后様に寵愛されるだけでなく傅恒(ふこう)に嫁いだ。富察家には皇后様のご加護が必要なのよ。なのにあなたはどうしてあんなことをしたの?」
瓔珞(えいらく)は言いあmした。
「何を言うの?私が何を企んだと?魏瓔珞(ぎえいらく)。すべてはお前に原因があるのよ!お前が長春宮に来るまでは私が一番大事にされた。でもお前は皇后様の腹心となり私は追いやられたわ。」
爾青(じせい)は瓔珞(えいらく)を指さして怒鳴りました。
「だからあなたは明玉(めいぎょく)を懐柔して私と敵対させていたのよね。あなたが裏で操っていた。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「爾青(じせい)。瓔珞(えいらく)のことは恨んでも、皇后様のおかげで傅恒(ふこう)殿の正室になれたのよ?」
明玉(めいぎょく)は言いました。
「私は正室の座を勝ち取った。傅恒(ふこう)に言ってやったの。陛下に魏瓔珞(ぎえいらく)を殺されてもいいのかと。しべては自分で勝ち得たものよ。あの人は、あの人は口添えしてくれなかったわ!」
爾青(じせい)は富察皇后(ふちゃこうごう)の肖像画を指さして怒鳴りました。
「それでもあなたの望みは叶ったのよ?」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「傅恒(ふこう)にとって私は名ばかりの正室。私を遠ざけたわ。つらい思いをしたのにこのありさまよ。ならば傅恒(ふこう)に地獄の苦しみを味合わせてやるわ。」
爾青(じせい)は大げさに言いました。
「そのような理由で復讐を?」
瓔珞(えいらく)は尋ねました。
「私が陛下のお手付きとなることで傅恒(ふこう)に消せぬ屈辱を与えたわ。ふふふふ。とても愉快だったわ。あの時の傅恒(ふこう)ときたら・・・。」
爾青(じせい)は言いました。
「あの人は皇后様とは関係無いわ。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「誰のせいだと思うの?お前のせいよ。だから皇后に教えてやったの。あなたは皇子を失い私は陛下のお子を宿したとね。皇后にとっては慰めになったはずよ。」
爾青(じせい)は言いました。
「正気じゃないわ!」
明玉(めいぎょく)は言いました。
「そうよ。紫禁城で六年を過ごすうちに正気を失って行ったの。明玉(めいぎょく)。あなたと同じ包衣の出自でも格が違うのよ。私の祖父は大学士よ。身分が低いお前に私の気持ちがわかる?皇后様は私よりも令妃(れいひ)を寵愛した。お前などいなければよかった!お前さえいなければ!だから皇后を苦しめたの。皇后が苦しむほど本当に愉快だったわ。善人ぶった皇后を苦しめたら最高の気分だった。」
爾青(じせい)は言いました。
養心殿。
乾隆帝は儀礼用の服に着替えました。
徳勝はまだ令妃(れいひ)が親蚕殿(しんさんでん)に到着していないと皇帝に言いました。
「大事な儀式なのに来ていないとは?どこへ行ったのだ?」
「一等忠勇公夫人もまだです。」
徳勝は言いました。
長春宮。
「爾青(じせい)。いつも優しかったあなたがどうして?」
明玉(めいぎょく)は尋ねました。
「後宮で奴婢が笑顔でいられると本気で思ってるの?もとより私は笑うことが嫌いなの。主の機嫌を取るために無理して笑っていただけよ。身も心も傷ついても笑顔を作っていたわ。」
爾青(じせい)は言いました。
「卑劣な言い訳ね。後宮では誰もがつらい思いをしている。誰もが苦しんでいるのよ。あなただけじゃない。自分のつらさを皇后様に押し付けるなんて、それが復讐なの?皇后様はあなたを寵愛した。でもあなたは恩を仇で返したのよ。純貴妃(じゅんきひ)よりも、卑怯で始末におけないわ。陛下との秘め事を皇后様に知らせて死に追いやったのよ。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「だから?陛下の後ろ盾がある私に手が出せるとでも?」
爾青(じせい)は言いました。
「ふふ・・・ふふふふ。」
瓔珞(えいらく)は合図しました。
太監が盆の上に何かを乗せて持って来ました。
「選びなさい。自害して。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「一等公夫人の私を勝手に罰するつもり?」
爾青(じせい)は言いました。
「選びなさい。」
瓔珞(えいらく)は富察皇后(ふちゃこうごう)の肖像画を見ながら言いました。
乾隆帝が長春宮に到着しました。
爾青(じせい)は皇后の肖像画の前で息絶えていました。
「魏瓔珞(ぎえいらく)。どういうことだ?」
乾隆帝は怒りました。
「いけませんか?」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「ヒタラ氏は重臣の正室で一等忠勇公夫人だぞ!」
乾隆帝は言いました。
「手を下したのは私で令妃(れいひ)様は無実です。」
明玉(めいぎょく)は釈明しました。
「延禧宮(えんききゅう)の女官の罪は主の罪である!」
乾隆帝は怒鳴りました。
「爾青(じせい)は、皇后様のご命日に、陛下との秘め事を包み隠さず打ち明けました。失意の皇后様はさらに打ちのめされたのです。ゆえに、死んで当然です。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「魏瓔珞(ぎえいらく)誤解するな。」
乾隆帝は首を横に振りました。
「ならば陛下が本当のことをお話ください。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
乾隆帝は釈明しようとしましたが、そこに皇后の輝発那拉(ホイファナラ)氏淑慎(しゅくしん)が現れました。
「令妃(れいひ)。あなたは何をしたの?」
嫻皇后(かんこうごう)は驚いた様子で尋ねました。
「皇后。一等忠勇公夫人は富察皇后を悼んで、悲しみの余り主を追って世を去った。」
乾隆帝は言いました。」
「なぜ令妃(れいひ)がここに?」
嫻皇后(かんこうごう)は尋ねました。
「朕が到着した時に令妃(れいひ)もここへ来た。」
乾隆帝は言いました。
「令妃(れいひ)。本当なの?」
嫻皇后(かんこうごう)は尋ねました。
「皇后。朕の話を疑うのか?」
乾隆帝は言いました。
「もちろん信じております。ですが後宮にいる百人以上の妃が笑顔の爾青(じせい)を見ております。富察皇后様の後を追ったとは思えません。この件は私にお任せください。」
嫻皇后(かんこうごう)は言いました。
「皇后はどう収めるのだ?」
乾隆帝は尋ねました。
「珍児(ちんじ)。忠勇公夫人の遺体に何の痕跡も残らぬようにきれいになさい。夫人は皇太后様にご挨拶し親蚕礼(しんさんれい)に遅れたことにします。他の者には輿で帰る途中で急病になり亡くなったことにして葬儀は七日後に行わせます。ただ富察家の協力が必要ゆえ人を遣わせて大奥様を説得しましょう。令妃(れいひ)については・・・。」
嫻皇后(かんこうごう)は言いました。
「令妃(れいひ)は病だ。」
乾隆帝は言いました。
「陛下。私が病ですって?」
瓔珞(えいらく)は笑いました。
「そうだ。重篤な病だ。ゆえにすぐに延禧宮(えんききゅう)へ戻り侍医を呼んで治療せよ。」
乾隆帝は命じると部屋から出て行きました。
「承知いたしました。」
瓔珞(えいらく)は土下座しました。
爾青(じせい)の遺体が運び出されました。
「随分荒っぽいやり方ね。あの者は一等忠勇公夫人よ。陛下の許可なく自害させたの?」
嫻皇后(かんこうごう)は尋ねました。
「シタラ氏は陛下のお手付きになった。殺せると思いますか?」
瓔珞(えいらく)は皇后に言いました。
「敵を懲らしめる執念には感服するわ。でもたかがヒタラ爾青(じせい)ごときに陛下の寵愛を捨てる値打ちがあるの?」
嫻皇后(かんこうごう)は言いました。
「私がヒタラ氏は陛下のお手付きだと言った時に、皇后様は顔色一つお変えになりませんでした。ご存じですね?」
瓔珞(えいらく)は尋ねました。
「知らぬ顔をしているからこそ後宮で生き残り最後まで笑っていられるわ。あなたに警告するから肝に銘じてちょうだい。」
嫻皇后(かんこうごう)は言いました。
「やはりでしたか。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「何の事かしら?」
嫻皇后(かんこうごう)は言いました。
「琥珀を私のもとへ来させたのはあなた様です。琥珀が私に真実を話す前に皇后様は既に聞き出されていた。私が爾青(じせい)を殺すと見込んで琥珀を私のもとへ来させたのです。皇后。自らお手を汚さぬ企みは見事です。汚れたのは私の手です。」
瓔珞(えいらく)は言いました。
「殺されたのは?」
嫻皇后(かんこうごう)は言いました。
「ヒタラ爾青(じせい)です。そして私は陛下のご寵愛と情を失いました。」
瓔珞(えいらく)は答えました。
「ふふ。さっきは信じなかったけどあなたは本当に重病になったようね。帰って養生なさい。」
嫻皇后(かんこうごう)は部屋から出て行きました。
「瓔珞(えいらく)。私たち、はめられたの?」
明玉(めいぎょく)は尋ねました。
「明玉(めいぎょく)。爾青(じせい)を殺めたことを後悔してる?」
「いいえ。まったく。殺されて当然よ。」
「そこが皇后のうまいところよね。すべてお見通しだった。自ら罠に入るように。」
夕方の養心殿。
乾隆帝は玉を手に持っていました。
過去。
乾隆帝が目覚めると乱れ髪の爾青(じせい)が部屋にいました。
「なぜそなたがここに?」
乾隆帝は尋ねました。
「陛下。長春宮を出た私を、傅恒(ふこう)はずっと冷遇していました。皇后様に訴えたかったのですが身重なので打ち明けられず陛下にお願いしようかと・・・。まさか陛下が私にお手をつけられるとは・・・。私がいけなかったのです。死んでお詫びいたします。どうかお願いです陛下。富察家の者を罰しないでください。私が生まれ変わったら牛馬となり陛下にお仕えします。」
爾青(じせい)は土下座しました。
「お前がここで死ねば皇后への侮辱となる。出て行け。」
乾隆帝は冷たく言いました。
養心殿。
乾隆帝は当時の事を思い出し頭を悩ませました。
承乾宮。
「陛下は延禧宮(えんききゅう)に最高の皮を贈られたそうです。」
珍児(ちんじ)は陛下から賜った毛皮を皇后の隣に置きました。
「毛皮なんて重要ではないわ。」
嫻皇后(かんこうごう)は言いました。
「でも皇后様の名誉に関わります。以前なら恰克図(キャフタ)で買った毛皮は承乾宮に贈られ皇后様が妃嬪(ひひん)に与えました。しかも忠勇公を殺したことは陛下への裏切りです。令妃(れいひ)はもう再起しないのではありませんか?」
珍児(ちんじ)は尋ねました。
感想
瓔珞(えいらく)54話の感想です。何と!悪魔とは爾青(じせい)のことだったんですね。富察皇后(ふちゃこうごう)を6年間支えておきながら主人を裏切り、主人の夫との子をなして死に追い詰めてしまうという典型的な裏切り者です。中国人でもそんな人のことはとっても憎いみたいですね!しかしさっぱり意味がわからないのが、誰が爾青(じせい)に引導を渡したのかについてです。嫻皇后(かんこうごう)曰く「たかが包衣の出身」の爾青(じせい)を政治リスクを冒してまで殺す必要があったのか。ヒタラ氏を敵に回すことをフチャ家のお母さんは嫌がっていました。それほどフチャ家に力が無いというのでしょうか!??高貴なフチャ家なのに、どうして元奴婢階級のヒタラ氏を警戒しなければいけないのか物語の筋としては信じるに値する演出がなされていません。
乾隆帝も爾青(じせい)とやってしまったことを覚えていたようです。男なので責任をとりたくなくて逃げていたようですね。爾青(じせい)が死んでくれて一番喜んでいるのは乾隆帝かもしれません。夫婦仲が悪いと知って縁を結んだのは乾隆帝ですから仲人の責任というものがあると思います。富察傅恒(フチャふこう)にとっても家職を虐げる爾青(じせい)がいなくなってせいせいしたことでしょう。
しかし誰が爾青(じせい)を殺したのでしょうか。台詞では明玉(めいぎょく)さんが瓔珞(えいらく)の手を汚させないために殺したと言ってましたね。取り押さえたのはさしあたり袁春望(えんしゅんぼう) あたりでしょう。瓔珞(えいらく)は命じただけで手を汚さなかったようです。
爾青(じせい)の醜い本性と、表面的な大人しくて上品な装いはまるで悪魔と天女のようでしたね!
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