瓔珞(えいらく)62話 落ちぶれた妃
目次
あらすじ
明玉(めいぎょく)は死の間際に順嬪(じゅんひん)から贈られた金の鋏で自害したので瓔珞(えいらく)は深く傷つきました。傅恒(ふこう)が嗚咽する瓔珞を慰めようとしたところを乾隆帝に見られてしまいました。順嬪は瓔珞が傅恒に贈った香袋と同じ刺繍の手巾を持っていることを皇帝にほのめかしました。
冷静になった瓔珞(えいらく)は順嬪が明玉に贈った道具箱を調べました。小全子(しょうぜんし)は明玉が嫁ぐ前日にこれが刺繍の手本とともに届けられたようだと答えました。箱の中には鋭利な金の棒も入っていました。
劉女官(りゅうにょかん)が順嬪(じゅんひん)に会いに来ると侍女の遺珠が「順嬪様は体調がすぐれず共に参れません」と断りました。遺珠は順嬪が無理をして刺繍でお経を書いていると言いました。劉女官は順嬪の身体を皇太后様が心配なさっていると伝言を残して帰りました。その様子を順嬪鈕祜禄(ニオフル)氏が部屋の中から伺っていました。
紫禁城に雨が降りました。
瓔珞(えいらく)は傘もささずに養心殿に急いでいました。
養心殿。
李玉(りぎょく)はずぶ濡れの瓔珞(えいらく)を見るなり「傘はどこだ!」と慌てました。
李玉(りぎょく)はただちに瓔珞の頭に傘を差しました。傘を手にした珍珠(ちんじゅ)と小全子(しょうぜんし)もすぐに瓔珞に追いつきました。
「令妃(れいひ)様。この大雨のなかどうしてお越しになったのですか?」
李玉(りぎょく)は尋ねました。
瓔珞は陛下に伝言を頼みました。
「李総管。急用なの。伝えてくれたら生涯恩に着るわ。」
瓔珞(えいらく)は頭を下げました。
李玉は戻って来ませんでした。
瓔珞はずっと雨に打たれていました。
李玉は帰るように言いました。
瓔珞は帰りました。
皇帝の部屋。
乾隆帝は怒っていました。
雨があがりました。
麗景軒(れいけいけん)。
順嬪(じゅんひん)は化粧室で妖艶な舞の練習をしていました。
令妃(れいひ)がやって来ました。
順嬪は馴れ馴れしく瓔珞に挨拶しました。
「ずっと考えていたの。明玉(めいぎょく)の死には私にも責任がある。明玉が病と知りながらあなたに教えなかったの。自害するとは思っていなかったわ。瓔珞。どうしてあなたは笑うの?」
順嬪は言いました。
「これは、あなたが贈った品ね。」
瓔珞は鋏が入った箱を開けました。
「明玉の道具が古かったから金製の新しい品を贈ったわ。まさか死の原因となるとはね。」
「聞かなくてもあなたは私に話した?」
「いいえ。」
「どうして?」
「やっと得た信頼をここで失いたくなかったの。明玉は死に急いだので私はあなたに隠していたわ。すべてはあなたを守るためなの。」
「言いなさい。あなたが私に近づいたのは、何のため?」
瓔珞は立ちあがりました。
「本当の友になりたかったの。本当の友が欲しかった。」
「まだ隠し立てをする気?」
「あなたのためよ。」
「嘘よ。」
「あなたのためよ。」
「明玉を死に追いやった理由は?」
瓔珞は激高して鋏を振り上げました。
「私は迫ってないわ。明玉が選択したの。私に責任があるとしたら自害を止めなかったことよ。でも苦しまずに済むでしょ?」
順嬪は顔をしかめて釈明しました。
「どういうことなの?」
「瓔珞。あなたは明玉とは違う。生きないと。明玉の命はあとどれほどだったと思う?一日、二日?ひと月?結婚しても苦しみが増しただけ。安らかに逝かせてあげたのはせめてもの憐みよ。私なりに助けてあげたのにどうして恨むの?」
順嬪(じゅんひん)は鋏を箱に戻りました。
「あなた正気なの!?」
瓔珞は叫びました。
「瓔珞。最後だから言わせてちょうだい。明玉にとっては自害が最良の選択だったわ。あなたは神ではない。人なのよ。皆を幸せにできないの。明玉は死んで、あなたは自由になったわ。」
「黙りなさい!」
「私は明玉のことを隠して死なせてしまった。それが赦せないのね。ならこの鋏で私の胸を刺すがいいわ。」
順嬪は鋏を自分の胸に突き立てました。
瓔珞(えいらく)は鋏を取り返そうともみ合いになりましたが鋏は順嬪(じゅんひん)の胸に刺さりました。
「沈璧(ちんへき)!」
瓔珞が慌てて駆け寄りました。
そこに皇太后が現れました。
皇太后は順嬪に駆け寄ると侍医を呼びました。
「瓔珞。どうしてなの?どうしてこんな酷いことをするの?」
順嬪は泣きました。
「この者を捕らえなさい!」
皇太后は命じました。
「皇太后様!」
瓔珞は太監に連行されました。
寿康宮(じゅこうきゅう)。
乾隆帝が母に呼ばれてやって来ました。
皇太后は遺珠に説明させました。
「令妃様が突然恐ろしい形相で順嬪様に迫られました。明玉さんの病は治る見込みがなかったのです。順嬪様はそれを隠して令妃様に責められました。令妃様は怒りのあまり順嬪様を刺したのです。」
遺珠は泣きながら言いました。
乾隆帝は順嬪(じゅんひん)に会いに行くと言うと、皇太后が禁じました。
皇太后は令妃をまず処断してからだと言いました。
「母上。目撃者の話を聞いたのですか?」
乾隆帝は尋ねました。
皇太后は遺珠から話を聞き、珍珠(ちんじゅ)を慎刑司(しんけいし)に送って尋問し、令妃(れいひ)の処分は皇帝に任せると言いました。
「母上。瓔珞をお気に召していたのでは?」
「和安を傷つけた者は赦さぬ!」
「母上。順嬪は和安ではありません。」
「私にとっては和安なの。令妃がしたことは過失であれ正気の沙汰ではない。厳しく罰するつもりよ。」
皇太后は怒っていました。
麗景軒(れいけいけん)。
嫻皇后(かんこうごう)は養生している順嬪(じゅんひん)に会いました。
順嬪は負傷しているので挨拶することができないと釈明しました。
「大したものね。」
「何のことですか?」
「令妃は皇太后に尽くして円明園で三年を過ごして固い絆を結んだわ。後宮では皇太后は令妃の後ろ盾よ。それをあなたは三月もたたずに奪った。皇太后のお気に入りとなりあらゆる庇護を受けている。本当に驚いたわ。」
「滅相もございません。」
「令妃はずる賢くて容易に勝てないわ。明玉の死を利用して打ち負かすとは、あなたは只者ではないわね。」
「皇后様。私と手を組みませんか?」
「あなたと?」
「そうです。」
「互いに共存できない者同士よ。無理だわ。」
「私たちの敵は同じよ。互いに、助け合ってはどうかしら?」
「ふふ。あなたを気に入ったわ。」
二人が話していると、乾隆帝が部屋に入って来ました。
乾隆帝は順嬪(じゅんひん)に養生を命じると、令妃(れいひ)の処罰について希望を尋ねました。
順嬪(じゅんひん)が黙っていると、嫻皇后(かんこうごう)は令妃(れいひ)を惑わした者を厳しく罰し、令妃(れいひ)を謹慎させましょうと言いました。
乾隆帝は順嬪の意見を尋ねました。
「令妃は故意に人を傷つける人ではありません。ご寛大に願います。」
順嬪(じゅんひん)は言いました。
延禧宮(えんききゅう)。
嫻皇后(かんこうごう)は女官と太監たちが呼び出すと、令妃を唆した者は名乗り出るように命じました。使用人たちには身に覚えがありませんでした。太監の一人は小全子(しょうぜんし)を指さしました。小全子(しょうぜんし)は罪を否定しました。
珍児(ちんじ)は令妃(れいひ)が普段何を話していたか話せば罪は軽くなると言いました。
小全子は令妃が日頃から順嬪(じゅんひん)を「君主を惑わし国に災いをもたらす」と罵っていたと嘘をつきました。
嫻皇后(かんこうごう)は全員を連行させました。
「嫻皇后様。順嬪と手を組んだのですね。」
瓔珞が戻って来ました。
「令妃。陛下の寵愛。皇太后様の信頼。親友との交流。身体の自由。あなたはすべてを失ったわ。どうして落ちぶれたか反省なさい。」
嫻皇后(かんこうごう)は珍珠(ちんじゅ)と袁春望(えんしゅんぼう)を引き連れて帰りました。
瓔珞は咳き込みました。
夜の延禧宮(えんききゅう)。
瓔珞は咳が治りませんでした。
女官が食事を持って来ました。女官は侍医を呼んではどうかと尋ねました。
瓔珞は冷遇されていては侍医は来ないと言いました。
「いつもお優しい令妃様を貶めた小全子は令妃様の体面を傷つけ乾清宮に引き抜かれました。」
女官は言いました。
二人の話を袁春望(えんしゅんぼう)が盗み聞きしていました。
「人は高みに昇りたがるものよ。不思議じゃないわ。」
瓔珞は言いました。
「でもあの者は良心が無さすぎます。延禧宮(えんききゅう)の者は皆杖刑(じょうけい)を受けたのに小全子(しょうぜんし)だけは・・・・。」
女官は袁総管の姿を見ると下がりました。
袁春望(えんしゅんぼう)は瓔珞(えいらく)の隣に座りました。
「明玉がそんなに大切か?ただの奴婢だろ。価値は無い。明玉のためにお前は正気を失い順嬪と戦って潰された!」
「・・・・・・。」
瓔珞は黙っていました。
庭。
「今日からお前は令妃に仕えるな。延禧宮の一切は奴に任せる。」
袁春望(えんしゅんぼう)は女官に命じました。
小全子(しょうぜんし)がおかしな笑みを浮かべながら現れました。
女官はせめて食事の世話だけでもしたいと言いましたが袁春望(えんしゅんぼう)に「命がおしければ口出しせぬほうがよい」と脅されました。
「私に逆らったお前をなぜ使うと思う?」
袁春望(えんしゅんぼう)は小全子(しょうぜんし)に尋ねました。
「令妃(れいひ)を生かしておけば裏切り者の私には不利でございます。」
「お前は賢い。賢い者と親しくなりたい。うむ。」
袁春望(えんしゅんぼう)は小遣いを地面に落としました。
小全子はそれを拾うと再び気味の悪い笑みを浮かべました。
「私は悪い噂を聞きたくない。」
袁春望(えんしゅんぼう)は密かに令妃(れいひ)を殺すよう小全子(しょうぜんし)を消しかけました。
瓔珞(えいらく)の部屋。
「令妃様。水は巡った後はもとの場所に戻るものです。私めも同じでございます。私たちの縁はよほど深いのでしょう。目をお覚ましください。以前とは違うのです。」
小全子(しょうぜんし)は茶碗一杯のおもゆよりも薄い粥を瓔珞(えいらく)の前に置きました。
「小全子。よくしてあげたのに恩を仇で返す気?」
「令様。よく御覧ください。私以外の誰がここに来たがるというのですか?あなたは傲慢です。いらぬのですか?」
小全子は粥を持って行きました。
別の日の麗景軒(れいけいけん)。
舒妃(じょひ)は順嬪(じゅんひん)を見て数日ですっかり痩せたと言いながら心配している振りをしました。舒妃(じょひ)は瓔珞(えいらく)を毒婦と罵りました。
慶嬪(けいひん)は静観していました。
舒妃は見舞の品々を順嬪に贈りました。
順嬪は舒妃を無視しました。
舒妃は舒嬪の隣に座ってごまをすり、これまでの無礼の許しを請い始めました。
「あなたは令妃と嘉妃(かひ)が罰を受けたから怖くなったのですか?」
順嬪(じゅんひん)は言いました。
「納蘭(ナーラン)さんは真心を尽くしています。問い詰める必要があるでしょうか。」
慶嬪(けいひん)は舒嬪(じょひん)を擁護しました。
「あなたたちは私とは釣り合わないわ。」
順嬪は言いました。
舒妃は怒って帰りました。
「順嬪様は誰よりも寵愛されています。令妃様も及びません。見逃してあげては?」
慶嬪(けいひん)は言いました。
「令妃を助けたいの?」
「はい。そうです。」
「後宮のおなごは皆、互いを憎み合っていると思ったわ。」
「同じおなごでもあなたのように寵愛を一身に受ける者と、私のように能力が及ばぬ者がおります。私にしてみれば後宮も朝堂と同じです。皇后様は君主で妃嬪(ひひん)は臣下。後宮は退屈なので親しめる友を増やして共に遊んで安らかに暮らしてみてはどうでしょうか。」
「・・・・・・。」
「違うのですか?」
「それがあなたの本心なら、あなたには戦う力が無い。令妃の赦しを請う資格がないわ。」
「そうですか。私のことはどうでも、令妃様は落ちぶれました。見逃してあげては?」
「令妃を殺したいのは私じゃないわ。遺珠。お見送りして。」
順嬪(じゅんひん)は慶嬪(けいひん)を追い払いました。
養心殿。
乾隆帝は富察傅恒(フチャふこう)に劉徳照(りゅうとくしょう)の処刑に反対した理由を尋ねました。
傅恒(ふこう)は劉徳照(りゅうとくしょう)は妄言で民を惑わしたが既に正気を失っていると言いました。
和親王弘昼(こうちゅう)は劉徳照(りゅうとくしょう)の家には反清復明という反体制を意味する紙があったと言いました。
傅恒(ふこう)は劉徳照(りゅうとくしょう)は字が書けないので官吏が手柄を立てるために証拠をねつ造したのだろうと言いました。
「傅恒。官僚仲間を疑うとはそなたは同じ国に仕える者なのか?」
和親王は傅恒を中傷しました。
乾隆帝は劉徳照を肉削ぎの刑に処し巡撫(じゅんぶ)と今後は総監に皇帝を侮辱する者は容赦なく殺すよう命じました。
和親王は別の件で銅山県の堤防が決壊した罪を問い役人の同知の李敦(りとん)と守備の張賓(ちょうひん)を処刑するが国の重臣である高斌(こうひん)の処断は皇帝の指示を仰ぎました。
傅恒(ふこう)は高斌(こうひん)が職務を怠けたことは無いと弁護しました。
和親王は高斌(こうひん)が部下の怠慢を放置していたのになぜ助けようとするのか傅恒(ふこう)に尋ねました。
傅恒(ふこう)は富察家と高家は長年対立していたので高斌(こうひん)をかばう理由は無いと答えました。
「高斌が死ねば誰が治水をするのだ?少しは考えろ。」
傅恒は和親王を叱りました。
乾隆帝は高斌を処刑しないが目の前でその部下を殺して恐怖を味合わせた後に釈放すると命じました。
和親王は納得して下がりました。
傅恒(ふこう)は高斌を脅すことに反対しました。
乾隆帝は高斌のこれまでの治水の失態を赦してきたが無能でもう赦しがたいと説明しました。
傅恒(ふこう)は高斌(こうひん)が有能で慧賢皇貴妃(けいけんこうきひ)の父で既に七十歳を超えているので罰しても辱めてはならないと主張しました。
「傅恒(ふこう)。そなたは誰のために必死なのだ?高貴妃(こうきひ)のためではなく、令妃(れいひ)のためだな。」
乾隆帝は傅恒(ふこう)を挑発しました。
「陛下。臣下は後宮に干渉しません。」
傅恒(ふこう)は正直に答えました。
「ならよい。下がれ。」
乾隆帝は言いました。
傅恒が養心殿を出ると太監がやって来て海蘭察(ハイランチャ)を慰めて欲しいと頼みました。
侍衛(しえい)室。
傅恒(ふこう)が部屋に入ると順嬪(じゅんひん)が背を向けて立っていました。
「順嬪(じゅんひん)。私を罠にはめても身を滅ぼしかねませんよ。」
傅恒(ふこう)はすぐに出て行こうとしました。
「令妃が死んでもいいの?ではお好きになさって。」
順嬪は言いました。
傅恒は部屋に留まりました。
「順嬪様。あなたは陛下の寵愛を独占しているのにどうして瓔珞を殺そうとするのです?」
「魏瓔珞はあなたの想い人ね。以前目にしたあなたの香袋に特別な刺繍が施されてあったわ。入内後にわかったの。魏瓔珞はあなたの想い人だと。どうして大人はあの人を失ったの?」
「回りくどい言い方はやめてください。」
「あなたが愛したおなごは他の男に奪われ今や捨てられかけている。どんな気持ち?」
「くだらない。」
「魏瓔珞は虫の息よ。」
「どういうことだ。」
「皆を怒らせたから落ちぶれたわ。じきに誰かが殺すでしょう。軟禁されて水しか与えられずいつまで生きられるかしら?」
「誰のせいだと思ってる!」
「私のせいじゃないわ。あなたよ。魏瓔珞(ぎえいらく)はあなたに嫁ぐ予定だった。でもあなたは瓔珞を捨てた。あの人を落ちぶれさせたのはあなたよ。言い返せないでしょ。今まで瓔珞を思い出しては心を痛めたでしょう。苦しんで後悔したのでは?」
「自分が選んだ道に後悔はない。」
「怖いのよ。過去に向き合うことが。必死で己に後悔はないと言い聞かせている。過去のことだ。これからはよくなると。一体己と他人のどちらを欺いているの?瓔珞の幸せな人生をあなたが台無しにしたのよ。やっと怒ったわね。普通の男ならとっくに罵っているはずよ。あなたは怒っているのに理性を失わない。だから愛する人を失ったのよ。」
「話はそれで終わりか。これにて。」
傅恒(ふこう)は去ろうとしました。
「なぜあの者を放したの。皇帝だから愛する人を奪われてもいいの?傅恒。あなたから奪ったおなごを陛下は今憎んでいる。それなのに陛下を敬い続けるなんて不公平だわ。」
「今の言葉を陛下に伝えたらどうなると思う?」
「どうなるの?あなたは令妃を想っているわ。何を言おうと令妃をかばっていると陛下に思われる。図星かしら。傅恒。しきたりに縛られ憂鬱でしょう。我慢しているとおかしくなるわよ。目を覚まして。」
順嬪は傅恒を唆しました。
怒った傅恒は壁に順嬪を押し付けました。
そして何も言わずに去りました。
延禧宮(えんききゅう)。
瓔珞は寝込んでいました。
「水・・・・水・・・・。助けてちょうだい。恩を忘れたの?陛下は私を軟禁するようお命じになったけど、本当に死んだらあなたは殺されるわよ?」
瓔珞(えいらく)は小全子(しょうぜんし)に言いました。
小全子は水を取りに戻りました。
「毎日水は一杯しか与えてはならぬ。今日の分は終わったな。そちは下がれ。」
袁春望(えんしゅんぼう)が邪魔をすると小全子を下がらせました。
「私を殺したいほど憎んでいるの?」
瓔珞は尋ねました。
「どうだろうな。」
「粥一杯で、私を殺す気?」
「瓔珞。私が聞きたい言葉をなぜ言わない!」
「赦しを請えというの?お断りよ!」
瓔珞は怒鳴りました。
庭。
「今日からは、粥も与えるな。」
袁春望(えんしゅんぼう)は小全子(しょうぜんし)に命じました。
「それはなりません!死んでしまったら・・・。」
小全子(しょうぜんし)は慌てました。
「寵愛を失った妃だ。このさびれた宮殿でじきに死ぬだろう。いずれ皆にも忘れられる。令妃はどこまでも強気だ。挫折を味わい気力が落ちて病になった。侍医も私と同じ見立てをする。」
袁春望は陶酔した様子で言いました。
感想
瓔珞(えいらく)62話の感想です。明玉(めいぎょく)の死に順嬪(じゅんひん)が関わっていることに気づいた瓔珞(えいらく)は順嬪を問い詰めようとして罠に嵌りました。順嬪は瓔珞が怒って自分のもとに来ることを予想して自らを傷つけ瓔珞のせいにしたのです。
皇太后は順嬪(じゅんひん)のことを和安公主(娘)の生まれ変わりと信じていました。瓔珞(えいらく)は釈明の機会すら与えられず嫻皇后(かんこうごう)に軟禁の処罰を与えられました。
袁春望(えんしゅんぼう)は幽閉された瓔珞(えいらく)を飢え死にさせて殺そうとします。本当に死んでほしいのかどうかイマイチわかりませんが、精神的にまともではない袁春望ですからきっと瓔珞に対し本物の殺意があるのかもしれません。そんな袁春望(えんしゅんぼう)の何がいいのかわかりませんが、珍児(ちんじ)は求婚しました。
順嬪(じゅんひん)さらに傅恒(ふこう)を唆します。
このような戦を繰り返して何が楽しいのかさっぱりわかりませんが、続きが気になります。
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